第56巻
第66章 大学見学 〜見学編 大阪電気通信大学〜 [1]
神戸学院大学を見学した翌日の学校で、幌たちはそのことを星井出たちに言った。
「……ということだったんだ」
「そっか、幌たちはもう行ったんだな」
澄んだ青空を見上げながら、星井出が言った。
「早く行かないと、まとめる時間もあるから……」
「そーだな、友人の兄貴が行ってる大学にでも行くか」
「どこなんだ」
山門が聞いてみる。
「『大阪電気通信大学』だよ」
[大阪電気通信大学のトップページ:http://www.osakac.ac.jp/oecu/]
だが、それから行ける機会がなく、11月に入り大学祭があるまで待つ必要があった。
「今年は、11月の1〜3日が、大電通の大学祭になってるから、その時に行けばいいな」
神戸学院に行けなかった星井出が、放課後になって、雅に話しかける。
「そうだな、やつらも誘うか」
雅が携帯電話を取り出し、どこかへメールを出す。
「やつらって誰だよ」
星井出がメールの文面を見ながら聞く。
「宛先見ればわかるだろ。姉さんだよ」
送信が終わると、3分後には返信が帰ってきた。
部活へ向かっている最中だったが、携帯を開けてメールを確認した。
「了解、だってさ」
途中まで道が同じなため、雅は星井出に言った。
「まだ1週間あるから、その間に準備すればいいな」
「ああ、その通りだ」
それから、二人は色々と話し合って、それぞれの部室へ向かった。
情報部の部室へ入ると、すでに先輩二人が作業していた。
「星井出、今来ました」
「はいはい」
屋久と東丸が一緒にパソコンに向かって打ち込んでいる。
「何しているんですか」
「この1週間で校内で起こった事例を、コンピューターに入れてるのよ。ここ最近は、こんな作業をしなきゃならないのが、面倒なのよ」
「屋久先輩、一つ聞きたいんですが」
「なに?」
屋久はいったん手を休め、星井出の方を見る。
「大阪電気通信大学について、調べたいんですが、資料とか残ってないでしょうか」
「あるわよ。数年前ぐらいまでしかさかのぼれないけどね」
別のパソコンをつけながら、東丸が星井出に聞く。
「どうしたんだ、興味でもわいたのか?」
「いえ、総合の授業で出された宿題で、行ってみようかと思いまして……」
東丸は、何かを思い出そうとしている表情を浮かべている。
「出てきたわ」
だが、それを言う前に、屋久がパソコンに何かを表示させている。
「ここ数年間の、本校から大阪電気通信大学へ進学した生徒よ。受験総数、本校からの受験者数、合否結果が一覧できるわ」
『Excel』にまとめられた、その情報は、この学校ができて以来の全ての受験者の情報が載っているようだ。
「これって、全部そうなんですか……」
同じフォルダの中にある、他のデータには、色々な大学の名前がつけられている。
「そうよ、ただ、主要大学だけね。本当は全大学ができればいいんだけど、それだけで相当な時間と容量が必要になるから……」
屋久は、適当なことをいいながら、作業を続けていた。
30分ほどすると、再び情報部の扉が開けられ、誰かが入ってきた。
「ああ、やっぱりここにいましたか」
「おう、どうした?」
公安部2年、荒田卿弥がそこに立っていた。
扉を閉めて、東丸のところへ近付く。
「先生が呼んでましたよ、東丸部長。なんでも、他校と何かあったらしくて……」
「分かった、すぐに向かう。ここは大丈夫だよな」
東丸が屋久に聞くと、すぐに親指を立てて返す。
「安心して、残りはどうにかしておくから」
なぜか、じっと星井出を見ているのは、本人以外知らない。