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第539巻
「志望校は違っていてもな」
百貨店から歩いて帰っていた。
「うん?」
山門と幌が歩いていると、ふと山門が言い出す。
「こうやって遊ぶことができたらいいな」
「そうだな。家も近くといえば近くだしな」
遊びにいけば遊びにいける。
でも、しばらくはいけない、試験が終わるまでは、ずっと我慢だと、幌は分かっていた。
だから、遊ぶのは、少しの間は待ってもらう。
「テスト明けだな。まずは」
「だな」
少し前にはみんなが歩いている。
少しだけ、幌はみんなが遠くに感じる。
ふと、手を伸ばしてみるが、届かない。
その時、桜が振り返る。
「帰ろうか」
「だな」
駆け足で、桜のすぐ後ろへと。
そして、ゆっくりと、この時間を大切にしながらも一行は帰っていく。
あたりは暗く、寒くなりつつある。
けれども、幌たちは、これからへと向かって歩いていた。