第523巻
午後5時、文化祭がとうとう終わった。
「これをもちまして、本年度の手野市立手野高等学校文化祭を終了します。みなさん、お疲れ様でした」
どこからか拍手が聞こえる。
「終わったー」
幌が、疲れた声を出して言った。
「最後の1時間がきつかったな」
琴子が幌の横に座って言う。
後輩らも疲れた顔つきをしているが、その表情には何かやりきった感もあった。
「なんで最後にドッと来るんでしょうね……」
「しゃーない、そんなもんや」
及川の言葉に、琴子が答える。
「あとは売上を清算して、半額を生徒会に渡して、残りは山分けだな」
「もらえるんですか?」
がぜんやる気になったのは、ボンヤリと天を向けている岩嶋だった。
「せやで、ただな、一旦は全部生徒会に渡すんやけどな。こっちが計算したのとあっているかを確認して、もらうもん持っていきよったら、あとはこっちのもんや」
琴子が面白そうに言う。
「特にな、幌がおる料理部は、一番の稼ぎ頭やからな。いろいろと目を付けられとるから、しっかり計算せなあかんで」
「了解ですっ」
やる気に満ち溢れた顔をしている岩嶋が、及川と沢入を引っ張って控室へと入っていく。
出店で残った二人は、それをみていた。
「いやぁ、青春やなぁ」
琴子が言うが、幌は何も言わない。
「幌?」
ふと見ると、席に座ったまま、肩に頭をもたげてスゥスゥと寝息を立てて眠っていた。
クスッと琴子は微笑む。
「お疲れさん、幌」
言いつつも携帯で写真を撮っていた。