第52巻
第62章 大学見学 〜見学編 『神戸学院大学』〜 [3]
「山門君!」
明石駅の改札口を通るとすぐに山門を呼ぶ声が聞こえてきた。
「久しぶり!」
その女性は、急に山門に抱きついた。
直後、あわてて離れる。
すぐ横では、睨みつけている鈴がいる。
「どういう関係?」
「えっと……」
答えに窮している山門のすぐ横で、のほほんという表情を浮かべている彼女が、山門のいとこなのだろう。
「初恋の人だよっ」
山門のすぐ横に立ち、ニッコリとしながら言った。
幌たちは、一瞬の話で、何を言っているのかがわからなかった。
だが、理解した瞬間、驚きの表情を浮かべていた。
神戸学院大学行き55系統のバスに乗り込み、大学へ向かう車中では、明らかに鈴と山門の間に見えない溝があるように見える。
「それで、どんな関係ですって?」
自然にとげとげしい口調になっている。
「小学校の頃、俺が告られた相手だよ」
「そーよー。あの時は色々と考えていたんだけどね」
ウインクまでして見せる。
「結局、流れちゃってそれっきりよ」
「今は関係はないっていうことですか」
「そういうことになるわね。安心して二人は付き合ってチョウダイ」
安心したように、鈴は深く息をついている。
「な、心配するようなことじゃなかっただろ」
幌が鈴にさらっと言う。
「幌さんはそのような言葉を一言も言わなかったと思いますが」
冷徹な目を幌に向けて言う。
そんなこんなで、大学へ到着した。
「ここがバス停」
「見りゃわかるって」
バスの中で、簡単な紹介だけした後、彼女はずっと寝ていた。
「バス停って、大学の構内に直結しているんですね」
山門のいとこである桜上幸[さくらかみさち]は、鈴たちと一緒に行動していた。
男はその数歩後ろを歩いている状態だった。
「ここが神戸学院大学なんだな」
「やっぱり大きいな」
「そりゃ、大きな学び舎で大学でしょ」
適当なことを言っている桜を無視して、男たちは合流する。
「ところで、幸はどこの学部だっけ」
「法学部の法律学科。将来の夢は、弁護士よ」
幸は何かと話したいらしいが、幌たちはほとんど聞いている様子はなかった。
「とりあえず、校内の案内をしていただけるのでしょうか」
「ああ、そうだったわね。その前にちょっとこっち来て」
幸は、バス停からちょっと歩いたところにある、守衛室へ向かった。
「すいません、入校許可証出してもらえませんか」
「ええ、ここに氏名、住所を書いてください」
守衛は、1枚の書類を出してきた。
そこには複数の人たちが書けるようにされており、すでに上半分は別の人たちで埋められている。
それぞれが書き終わると、守衛は首からぶら下げるような形の入校許可証を出した。
「校内にいる間は、ずっとぶら下げていてください。帰られる際には、返却してください」
「ありがとうございます」
ただ一人だけ、幸は学生証を見せていたので、入校許可証は発行されてなかった。
「準備できた?」
「ええ」
鈴が、幌たちの代表として答えた。
「じゃあ、さっくりと案内するね。まずはー……」