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第514巻
「何笑とるん?」
琴子が幌へと聞く。
「ん?いや、同じこと考えてたんだなって」
「へ?」
琴子は幌の話が見えないようだ。
それを気にせずに、幌は話し続ける。
「何やねんや、それ」
困っていながらも、琴子は嬉しそうだ。
「さて、片付けはどうなったかな」
幌が立ち上がる。
気恥ずかしさからか、顔を少し赤くしているようにも見えた。
「……なあ幌」
「ん?」
「……いや、何もない」
それがどうしたのかは、幌には分からなかった。
「どうしたのさ」
「大丈夫やから」
「違うだろ」
琴子の前で膝立ちになり、両手をとる。
「そういう時には、大丈夫じゃないって、そういうことだろ」
その瞬間、琴子は涙を流した。




