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第513巻
「今年で最後なんやね」
「まあな」
琴子も幌も、同じ方向を見て、ボヤキのように言った。
「早かったなぁ……」
幌が言う。
「せやな、思うたら、アッという間やったような気もするわ」
琴子が幌に答える形で言った。
「なぁ。高校も、あとちょっとなんだよなぁ」
そんな気がしないのに、そう思いつつも、幌はそれを言わなかった。
琴子も同じことを思っていると思ったからだった。
「そんな気、せえへんのにな」
「分かる」
ほら、と幌は思った。
いつの間にか、そんなことが分かり合えるようになっていた。
それが嬉しくて幌は微笑っていた。