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第509巻
「僕が横で作業してていいのかなって、そんな風に思ってしまって……」
及川が、まるで愚痴のように沢入に話した。
「大丈夫だよ」
「えっ」
沢入が及川に言った言葉に、思わず及川は声をあげた。
「だから、大丈夫だって。井野嶽先輩、そんなことで何か言うような人じゃないし、それより何より……」
沢入がちらりとガラス越しに幌の姿を見た。
「あの人、隣が誰かっていうの、多分気にしてないよ。あれだけ忙しいとね、特にね」
幌は買ってきてもらった材料を早速使っているようで、袋を破っては、冷蔵庫へと入れていた。
午後になるとより人が増えるという考えからだろう。