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第499巻
「ただいま帰りました」
及川が幌へと言った。
「おー、おかえり」
幌はクレープ生地ばかりを何枚も焼いている。
「何をしているのですか」
岩嶋が及川の後ろから顔をのぞかせて聞いた。
「クレープ」
「それは知ってます、どうして生地ばかり焼いているのかっていう話です」
「……スパッと聞くなぁ」
苦笑いをしながら後ろで琴子が言っていた。
「まあ、見てなって」
「先輩がそういうのなら……」
本当に何をしているのかがわかっていないようで、岩嶋は幌の手をじっと見ていた。