表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女子高と男子校  作者: 尚文産商堂
体育大会 当日編
47/688

第47巻

第57章 体育大会 後片付け編


コンピューター部と放送部が、機材の撤去をしている横で、公安部と情報部の指揮によるテントの撤去作業をしていた。

「さて、ではこれからテントなどの撤去作業を始めます。とりあえず、テントをばらしてください。布は体育館1階の倉庫、骨組みは運動場端にある体育倉庫に入れてください。それでは、お願いします」

公安部部長が、集まった人たちを前にしてどうどうと言い切った。

それから、作業が始まった。


最初に両端のテントからばらしていくことになる。

中央付近のテントは、放送部とコンピューター部が作業をしているので、一番最後になる。

そもそも、両端からしたほうが楽なのだ。

そちらの理由のほうが大きいと思われた。


「よっしゃー、じゃあ折るぞ」

テントを支えている骨組みは、中心部分が半分に折れるようになっている。

通常はロックされて動かないようになっているのだが、このような時には半分にパタンと折れて小さく収納できるように細工がされているのだ。

「いっせーのっ」

運動部の人たちが一気に折りたたんでいく。

そのすぐ横で、工事現場のように肩の上に載せて運んで行く部隊も自然に出来上がった。

「ちょっと、こっち手伝ってー」

テントの屋根に使われている布は、複数の女子部員[マネージャーなど]が折りたたんでいる。

ただ、大きいので、10人未満しかいない状態でたたむのは難しかった。

「手伝おうか」

偶然通りがかった人たちも一緒になって、手伝い始める。


「さぎょーおわりー」

氷ノ山が、伸びをしながら言う。

「御疲れさまでした。では、これで後片付けも終わりです」

東丸三郷 公安部部長が屋久京美 情報部部長を背負いながら言った。

「順次、作業終了した人から帰宅してください。月曜日からは通常授業であることを忘れないようにしてください」

それだけ言うと、東丸は校門から外へ出て行った。

「ほな、次は打ち上げやな」

結局最後まで一緒になって手伝っていた幌たちは、琴子に言われるままに琴子の家に向かおうとした。

「あ、ちょっとボクたち用事があるから…」

おずおずと手をあげたのは、文版だ。

「ミヤミヤ、ちょっと一緒に残ってくれる?コトちゃんのところへは、後から合流するから。コトちゃんの家でいいんだよね」

「そうやで」

琴子があっさりと返事をする。

「わかった。じゃあ、またあとでね」

そう言って、琴子たちと別れた。


「で、どこにつれていくんだ」

宮司を連れてきたのは、とある階段の頂上だった。

「ここだよ」

文版が扉を開けると、お昼ごはんを食べたところだった。

「屋上…」

大体察しがついてきているが、まだ聞かない。

風が二人のほほをなでていく。

文版の、セミロングの髪が、風と共に流れていく。

「空、きれいだね」

額にかかっている髪の毛を、右手で軽く流す。

「こうやって、屋上から見る夕日も新鮮でいいね」

徐々に山陰に入って見えなくなる夕日を、二人は柵にもたれながら見ていた。


「…好きな人って、いるの」

文版が唐突に聞く。

「ハァ?」

「いるの、いないの」

ズイッと迫ってくる。

宮司は、わずかに視線を泳がせながら、答える。

「いや、いないけど…」

元の位置に戻って、文版が手を握る。

赤面する二人、それを包むように太陽からの温かい視線が見えてくる。

「私、あなたのことが、好きなの!」

突然風が二人の間を駆け抜ける。

スカートがヒラリと舞いあがる。

あわてて前を押さえつける文版を見て、宮司は笑いだした。

「……何よ」

「あ、いや…なんとなくいつもと違うなーと思ってさ」

涙をハンカチで押さえながら言う宮司に、文版は切り返す。

「じゃあ…こうしてやる!」

そう言って、芝生の上に押し倒した。

不意を突かれた宮司は、そのままの勢いで文版の下になるように倒れこむ。

一気に顔が近づく。

風が、一瞬だけ止んだ。


文版がそれから馬乗りになると、二人して笑いだした。

「それで、答えは?」

「この状態でいやといえるか」

二人とも笑うのが落ち着いてから、そんなやり取りをした。


「おー、遅かったな」

「色々とあってな」

1時間ほどかけて、二人は琴子の家にたどり着いた。

「それでー?」

「どうだった」

席に座ったばかりの二人に、互いの陣営からそんなことばかり聞かれた。

「えーっと……」

たがいに目を合わせてから、一気に言った。

「私たち、付き合うことにしました!」

「おー」

なぜか拍手が起きる。

それからというもの、二人を祝ったり、体育大会が無事に終わったことを祝ったりする宴会は、夜通し続いた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ