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第457巻
「あたしもいろいろ言ってるんだけどね……」
氷ノ山は疲れているようだ。
文版の成績は中の下といったところだ。
欠点こそ取らないものの、ギリギリの教科がいくらかある。
それに対して、当の本人である文版は気楽な顔だ。
なんとかなるということだろうか。
「よし、じゃあこうしよう」
宮司は、文版を右人差し指で差し、残り2人の前で宣言をした。
「受験が終わるまで遊ぶのナシな」
「えー」
「えーじゃなくて、このままだと本気でヤバいだろ。受験が失敗して浪人しても知らんぞ」
「……わかった」
たまにこうして物分りが良くなる。
文版はそれだけつぶやくと、全力の笑顔を宮司へと向ける。
「じゃあ、合格したら、ご褒美が欲しいな」
「金が無いから、それを前提にして考えてくれよ」
「はい、交渉成立っ」
指切りしてあっという間に文版は部屋から出た。
「それじゃああたしも行くね」
「おう、頑張ってくれな」
氷ノ山は、星井出と宮司に手を振って言った。