第450巻
それじゃあね、と言って、今幌が使っている食器以外をすべて片付けると、あんなに騒がしかった料理部の部室として使っている家庭科室も静かになる。
「……んで、帰らないのか?」
残っているのは、琴子だ。
桜は天文部に行くねと言って部屋から出ていった。
後輩は、クラスで集まるからという名目で、元からきていない。
「ええねん。いっちゃん食べてしもうたからな」
琴子はそう言って、幌がさっきまで使っていた、洗ったばかりの食器を乾燥棚へと置いた。
「これで全部か?」
「そうそう、それで全部」
幌が全てのシンクの中を確認して琴子に告げる。
「あー、もうほとんどないなぁ」
材料を確認している幌がつぶやく。
あるのはわずかばかりの片栗粉と調味料類だけだ。
料理部は、学校公認の部活のため、しっかりと部費が学校から払われている。
それを使って、材料などを買うことになっていた。
「それぐらいなんか」
琴子が、幌が手に持っている材料類を見て言った。
「しょうがないさ。ま、これからは受験向けの勉強しないといけないし、後輩らに任せることにするさ」
幌がそう言って材料を棚に戻した。
「よし、帰るか」
「ん」
琴子が返事を短くして、二人で部室の後片付けをしてから、家庭科室のドアに鍵をかけた。