第44巻
第54章 体育大会 〜本番編 午後の部直前〜
幌たちが下へ降りると、すでにまばらながらも集まっていた。
「じゃあ、私たちは別のところに行かないとけないから」
桜たちのクラスはすぐ横ではあったが、違うことに変わりはない。
「また、放課後だな」
幌が桜たちにそう声をかけてから、クラスの席に戻った。
「今の得点は気にしたらいけない。これからの勢い次第で、いくらでも逆転の機会はあるんだから」
雅が幌のすぐ横に来て言った。
「今更遅いと思う…」
幌は何か色々と考えているようだが、あっさりとあきらめた。
本部のところでは、放送部、公安部、得点係と担当教員が、午後の部について打て合わせをしていた。
「午後は、200m競争・200mリレー・2人3脚走・スウェーデンリレーのそれぞれの決勝。生徒会種目・棒引き・綱引きをそれぞれ行うことになる。順番は、決勝以外のを先に行って、後は言った順だ」
先生はプリントを見ながら言った。
「それぞれの担当の2種目前になったら、ここに集まってくるようにな。そうでもしないと間にあわん」
「分かりましたー」
それだけ言うと、放送部と公安部だけが残って、他の人たちはそれぞれのクラスへ戻っていった。
「ふぁ〜〜」
文版はあくびをした。
のんびりと運動場を見ている。
「どうしたの」
すぐ横に座っていた豆見が、文版に聞いてみる。
「体育大会がこんなに大変なものだとは思わなかったから、ちょっと疲れちゃってね」
「大丈夫だよ。午後の部が終わりさえすれば、後は機材の撤収だけだろ。それに、そのあとは文化祭まで間があるじゃないか」
宮司が文版に言う。
「そうだねー。じゃあ、後半もがんばりますか!」
そう言いながら、台本として使っているプリントを見た。
「……これも、私たちの後輩たちが読むんだろうね」
「こんな字で読めるかよ。波ダッシュが延々と連なっているようにしか見えないし」
文版が持っているプリントには、3人と先生がメモったものが書かれていた。
「パソコンに打ち込んで、読めるように変えるさ。来年も俺たちはいるわけだしな」
宮司はほとんど気にしていないような顔で言いきった。
「でもさ、来年になったら読めなくなるかもよ」
豆見が突っ込むと、さらっと言い返す。
「1週間以内にする予定の反省会の時に、ついでに作れば大丈夫。その頃なら、まだ何を書いたかは、文字を見れば思い出せるだろうしな」
そう言って、午前の部の時に書いたメモの数々を見直していた。
いくばくかの時が過ぎて、文版がまだプリントを見直している時、すぐ横に座っていた先生が言ってきた。
「おい、これ放送してくれ」
「分かりました」
文版に渡されたのは、1枚のメモだった。
「連絡します。生徒の皆さんは、それぞれのクラスへ戻り、点呼を受けてください。繰り返します。生徒の皆さんは、それぞれのクラスへ戻り、点呼を受けてください」
マイクを置くと、先生が文版たちに言った。
「お前たちには、まだやってもらいたいことがあるからちょっと残っておいてくれ。それぞれの担任にはちゃんと了解をとってある」
「ありがとうございます。それで…」
文版が何か言おうとしたところを、先生が遮る。
「その時になったらわかるから、今は何も言うな。分かったな」
「分かりました」
それだけ言うと、3人が集まっていろいろと話し合った。
幌たちのところには、担任の高啓が点呼を取りに行った。
「全員居るか」
委員長はあっさりと答える。
「全員居ます」
もちろん、放送部の宮司は、あらかじめ人数には入れられていない。
このような時には、放送部は別のところにいるのが多いから、もともと数えないほうがいいのだ。
「じゃあ、これから午後の部に入るが、最初に言っておく。今、このクラスの得点は56点。男子校の学年3位。総合学年4位にある。これから、もっと頑張れば学年優勝を狙える範囲に入る。さあ、頑張るぞー!」
「エイエイオー!」
鬨の声をあげ、一気に盛り上がってきた。
こうして、後半戦が始まった。
決勝が目白押しの後半に一番盛り上がるのは、この高校の伝統だった。