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第439巻
弁当を広げ、文版と宮司で食べていた。
他には誰もいない。
今は、二人だけの秘密の世界に浸れていた。
空も、彼らを邪魔することはない。
日差しが眩しかろうと、雲が天井となり、ゆるめる。
さぁと、風があたりの熱を奪い取り、わずかな涼しさをもたらした。
「気持ちいいね」
文版が宮司へと話す。
「そうだな」
箸が止まる。
わずかしか残っていない弁当は、二人の時間を示していた。
何もしなくても時間は経つ。
だから、何かしていたいと、文版は思っていた。