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第435巻
「どう?」
坂上が川上のところへと帰ってきた。
「何もありませんよ。いつも通りです」
空はきれいに澄んでいる。
何も邪魔をするモノがない。
そこにチャックを開けるかのように、飛行機雲が一筋飛んでいく。
一陣の風が、本部席へと吹き込む。
さわっと、坂上が川上に近寄った。
「………」
何も言わないが、坂上が言いたいことは分かっている。
川上は、しっかりと分かっている。
ただ、それを言葉に紡ぐことができないだけだ。
「大丈夫」
坂上は川上に言った。
言わなくても、大丈夫だと。そう川上は受け取った。