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第434巻
本部席では相変わらず保健係が暇そうにしている。
けが人がいない限り、彼らが忙しくなることは無い。
坂上は先生たちに挨拶すると言って本部席を放浪し始め、川上は再び本部席から様子を見ていた。
全力疾走している姿は美しく、きっと古代ギリシャの人たちも、同じことを考えていたのかと、物思いにふけっていた。
「暇ですね……」
川上の後輩が、バトンリレーの予選を眺めながら呟く。
「保健係てのはこんなものさ。俺が来てからけが人は出てないしな」
「そうなんですか」
後輩は1年生で、驚いた顔をしている。
「そうさ。みんな安全に配慮しているからだろうな」
目の前でバトンミスが起きるが、こけるようなことは無い。
カランと音がなり、一瞬でそれを拾いなおして、次へと渡した。