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女子高と男子校  作者: 尚文産商堂
体育大会 当日編
43/688

第43巻

第53章 体育大会 〜本番編 昼食〜


最後のランナーがゴールテープを切った時、乾いたピストルの音が運動場一面に響いた。

「選手、退場」

3年生2年生1年生がそれぞれ隊列を組んで、退場門へと向かう。

それを見届けてから、文版は放送を行った。

「この競技を持ちまして、午前のプログラムはすべて終了しました。生徒の皆さんは、それぞれのクラスの応援席に戻って、担任からの指示に従ってください。繰り返します。この競技を持ちまして……」

文版が放送を終わり、マイクを切ると、すぐ横にいた岩鳶が言った。

「お前たちも、クラスのところへ戻れ。ここは、俺が何とかしておく」

「分かりました」

文版たちはそれだけ言うと、それぞれのクラスのところへ戻った。


他の係の人たちも戻り終わってから、点呼が始まった。

「近くでいない人っている?」

委員長がクラスに声をかける。

ちょっとしてから、返ってくる。

「全員そろっているようだよ」

副委員長が簡単に数えて委員長に言う。

「せんせー。全員そろってます」

すぐそばにいながらも、かなり大声で委員長が担任に言う。

「分かった。じゃあ、お前たちも席に戻ってかまわないぞ」

二人が、それぞれの席に座ったことを見ると、すぐに担任が言った。

「これから、お昼ごはんの時間だ。学食は開いているから、使いたい奴は使ったらいい。弁当はどこで食べてもかまわない。それと、午後の部は1時30分からだ。10分前には、全員ここに集合すること。放送部は、本部に直接行ってくれとのことだ。じゃあ、昼飯をゆっくり楽しんでくれ」

担任はそれだけ言うと、そのまま職員室へ向かった。


この時点の得点を言っておこう。

女子高側

 1年1組38点・2組51点・3組92点

 2年1組48点・2組56点・3組85点

 3年1組102点・2組52点・3組33点

男子校側

 1年1組82点・2組56点・3組100点

 2年1組16点・2組50点・3組98点

 3年1組23点・2組65点・3組86点


幌が教室で弁当を食べようとして机の上に置くと、まわりに仲間が集まってきた。

「なあ、屋上で食べないか?」

弁当箱を持ってきた山門が幌に声をかける。

「そうだな…こんな機会ぐらいしか、屋上には行けないだろうしな」

そう言って、幌は立ち上がると弁当を持って一緒に屋上へ向かった。


「うっひゃー」

屋上へ通じるドアを開けると、そこには一面の芝生が広がっていた。

「そういや、去年に屋上緑地化計画とか言って工事したって言ってたな」

雅が幌たちに言う。

「なるほどな…ここ最近はやりの屋上緑化っていうことか…」

「あれー?幌も来てたんだ」

すぐ後ろから声が聞こえてくる。

振り返ると、階段の一番最後の段に足をかけている桜たちだった。

「普段は入れないから、こうやって遊びに来たんだ」

女子高と男子校で相互に入れるのは放課後だけで、それも部活など必要な用事がないといけないという決まりごとがあった。

ただ、ここ最近はその規則もないがしろにされていて、暇だから来たとか遊びに来たとかいう人も増えている。

「一緒に食べる?」

いつの間にか鈴が山門のすぐ横に立っていた。

「…そうだな」

山門はその気配を感じさせないという技術に対して驚きながら答えた。


「いっただきまーす」

一斉に弁当のふたを開ける。

「うっわー……」

桜がふたを開けたとたんに驚いた。

「これ、何の肉?」

「豚と牛。軽く赤ワインでフラッペしたのに、ソースをからめてご飯の上に載せたんだ。付け合わせのサラダに使っているじゃがいもは、ずいぶん前に芽が出て使えなくなったもの。庭で育ててたら無事にできたんでつかってみたんだ」

幌が軽く説明する。さも当然のようだ。

「すっごくおいしい…」

桜が一口食べて、思わず口から言葉が出てきた。

「丹精込めて作ったからな」

「どれどれ〜?」

すぐ横から、琴子がつまんできた。

「あ、こら」

桜が止める前に既に取っていっていた。

「うっわ…これ何…?」

「何って、普通の肉だよ」

幌は弁当箱をしまいながら言った。

「えらくおいしいがな……なあ、これってどうやって作るん」

琴子はかなり近づいて聞いた。

「いや…さっき話してたけど、聞いてた?」

「そんなこと、うちが聞くはずないやんか。なに言っとんねん」

「……威張って言うようなものでもないよな」

そんなこんなで、お昼休みも過ぎていく……


途中で音楽が流れてきた。

「ああ、放送部が流してるのよ。いつものようにね」

氷ノ山がさらっと言った。

流れてくるのが趣味に偏っているのは気にするべきではないのだろう。

『VOCALOID』やアニメソング特集を延々と聞かされているのは、まあ、どうでもいいことだ。

「ごちそーさまでしたー」

弁当を食べ終わると、片付けた。

「なんとなくお昼になったね」

空を見上げながら、氷ノ山が言う。

「そやなー」

琴子もすぐ横で寝そべる。


ゆっくりと雲が流れていく。

すぐ近くから、鳥のさえずりが聞こえる。

「…いったい何しゃべっとるんやろうな」

「さあ、人間たちにはわからないよ」

鈴が時計を確認する。

「さて、20分ほど前になりましたし、そろそろ行きますか」

「ん、分かった」

柵に身を委ねて外を見ていた幌たちがうなづいた。

これから、体育大会午後の部が始まる……

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