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第429巻
「いよいよ、なんだね」
桜がフレンチトーストを頬張りつつ、何やら神妙な顔持ちで話す。
「んだよ、らしくなく神妙になって」
「だってさ、これで高校生で最後の体育大会なんだよ。それを思うと、ちょっとね」
「感傷に浸っている間はないよ」
幌がいうと、壁掛け時計を指差した。
時間は8時10分。
今日は8時45分には観客席で待機していないといけない。
教室に荷物を置きに行ったり、他のいろいろなことをするのは、ギリギリな時間といえよう。
「それに、さ」
幌は何か言いにくそうに、奥歯に物が挟まったような言い方をしている。
「やっぱし楽しもうよ。最後なんだから」
「そうだよね」
何か桜も吹っ切れたようで、開き直った顔つきをした。
「よーし、じゃあ、今日もいっぱいがんばろー!」
「まず飯な」
そう言われて桜は、残っていたフレンチトーストを一気に口に押し込んだ。