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第420巻
「山門はなにかあったんだ」
雅が聞いた。
「まあな」
「んで、何があったんだ」
幌が山門に興味津々で聞く。
「鈴とデートだよ。それも海外にな」
「お、いいなー」
「熱いねー」
口々に囃し立てる。
遠くで何かくしゃみの声が聞こえたのは、おそらくは気のせいだろう。
「んで、海外くんだりまで何しに行ったんだよ」
山門はため息をついて、話し出す。
まるで何か観念したかのようだ。
「ご両親から別荘使っていいっていうお話で、フランスにあるっていう別荘を借りたんだよ。1週間ほどな」
「おー、んでさ土産は?」
「ない」
「えー」
わっはっはと笑いあっている。
みんな、最後の夏休みを満喫したようだと安心しているのかもしれない。