第414巻
「……ねぇ」
鈴は、夏休みでどんなことをしていたかを語り続けている山門を遮った。
「ん?」
「私たち、大学に行っても、ちゃんと付き合ってるわよね」
「あたりまえじゃないか、何言ってんだよ」
わかれるはずないだろ、と山門は鈴に言った。
「だよね、そうだよね」
「どうしたんだ、改めて」
「……私たち、もうちょっとしたら受験受けて、卒業でしょ」
「そうだね」
「そしたら、きっと別々の道を選ぶでしょ」
「そうなるだろうね」
山門がいう。
「だったら、私たち、別れちゃうんじゃないかって思って……」
「アホだなぁ」
すぐに答えた山門に、鈴は少し怒る。
「なんでよ」
「だってさ、考えてみろよ。俺らがわかれるはずないだろ。銃器オタクなんて、そうそういないんだしな」
話が合う人の方が、一緒にいて楽しいだろ。
そういうと、自然に鈴は涙が出てきた。
黙っているのを気にしてか、電話口で山門がなにか話そうと四苦八苦している。
「ううん、違うの。うれしいの」
えくっ、えくっと鈴が泣いているのに気付いた山門は、鈴に何と言おうか考えているようだ。
わずかな間、電話は途絶える。
「……あのさ、大丈夫だよ」
山門はきっと抱き寄せたいのだろう。
鈴がそこにいれば、ギュッとしたいのだろう。
でも、それをすることはできない。
だから、声でどうにかするしかない。
「大丈夫、大丈夫」
抱き寄せているときのような声で、山門は電話の向こうで話す。
どんどんと涙があふれる。
「……ねぇ」
「うん?」
「私のこと、好き?」
「ああ、大好きさ。世界一な」
「うん、ありがと」
ほろほろと泣きながら、鈴はそういった。
「大丈夫か」
「うん、大丈夫」
すっかり30分は話し込み、山門は泣き止んだ鈴に問いかけた。
「そっか。じゃあ、また学校でね」
電話を切ろうとすると、あわてたように鈴が言った。
「ねえ、山門」
「ん?」
「電話、してもいい?」
「ああ、いつでもいいよ」
寝てるかもしれないけどね、と山門は笑いながら言った。
そして、電話は切れた。
また学校で会おうと約束して。