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第413巻
「あ、もしもし。山門なんだけど」
部屋の中には鈴しかいない。
メイドは、紅茶を置いたすぐに部屋を出ていった。
だから、鈴は何のためらいもなく、声を出すことができた。
「もしもしっ、あ、あの、鈴です」
「わかってるよ」
電話口の向こうであっても、しっかり笑っているとわかるほどの声で、山門は話していた。
「緊張しなくても大丈夫。ところで何してるの?」
「何って、いまちょっと勉強の休憩」
「そっか。いや、特に何もないんだけどね、こっちも勉強していたら急に鈴のことが頭に浮かんじゃってさ」
あとはとうとうと山門は、まるで照れ隠しのように話し続ける。
鈴は、うん、うんとたまに相槌をしつつ、山門の話を聞いていた。