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第401巻
歩いて帰っていると、徐々に街が暗くなっていく。
黄昏から、空は漆黒へと移り変わる。
ちかちかと瞬いているのは宵の明星だろう。
まだまだ熱い、世界が熱で満ち溢れている。
幌はその熱を全身に受けつつ、家路についている。
街灯が、ほんわりとした明りを放っている。
LED電灯も多くなっているが、幌の家の周りでは、まだ白色を放つナトリウムランプが主流だ。
幌はこの電燈が好きだ。
優しい気分にさせてくれるからである。
必要なのは、日々の安らぎと、楽しみ。
それにわずかな苦みだ。
それが幌の生きる糧となる。
それを知っているからこそ、幌は今日も生きている。
家に帰ると、すでに桜がいた。
幌を見つけるや否や、すぐに抱きつこうとするが、ペイッと手で払いのける。
それからご飯の準備だ。
いつもの日常。
いつもの日々。
これが幌が生きている世界だ。
桜が幌の背中に覆いかぶさるようにして、幌に聞いた。
「ねえ、今日のご飯はなあに?」