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女子高と男子校  作者: 尚文産商堂
体育大会 当日編
39/688

第39巻

第49章 体育大会 〜当日編 当日準備〜


幌たちが学校に着くと、文版と宮司が放送機器の設置の仕上げをしていた。

「おはよう」

「おはようございます」

文版が幌たちを見つけると、すぐに駆け寄ってテントのところまでつれてきた。

「ねえ、ちょっとお願いがあるんだけど」

「どうしたの?」

まだ飲みきっていないレモリアの紙パックを持って、幌たちは放送機器のところへ集まった。

「まだコードをつないでいないのよ。ちょっと手伝ってくれない?」

「もう一人いるだろ?どこ行ったんだよ」

「ああ、ずーみーのこと?彼女だったら放送室へ言ってコード取りに行ってるよ」

文版が言った。

その時、向こう側からプラスチックの衣装ケースを抱えた人が帰ってきた。

「あ、みんなおはよう。もう来てたんだね」

「今日は教室によらなくてもいいから、直接こっちに来たのよ」

ドサッとケースを机の上においてから、幌たちを見た。

「…それ、全部コードなの?」

ケース一杯に入ったコードらしき黒い塊を指差して、桜が聞いた。

「そうよ。コードの接続、砂が入らないようにその接続部分をビニールテープでぐるぐる巻きにもしないといけないの。手伝ってくれるの?」

幌はため息を付いていった。

「しゃーなしだがな。何か後でおごれよ」

「おごるのは嫌。でも手伝ってくれてありがと」

そうして、結局放送のコードをつなげる手伝いをさせられることになった。


「このコードどこにつなげるのー?」

やったことが無い人にとっては、まったくわからない領域。

やったことがある人でも、なれていない限りは間違えることもある。

だが、宮司は的確に場所を教える。

「ああ、それはカセットデッキにつないで。一番運動場側の机の上にあるから」

「わかったー」

桜はそれを聞いてコードを持って早足で動く。

ちょっと離れた所では、文版が豆見と一緒になっていた。

「…ねえ、本当に大丈夫?」

「うん、大丈夫」

コードを持ちながら、精一杯背伸びをしている。

「このコードを向こう側に通すには、こうしたほうがいいからね…」

「それは分かってるけど…別の人に変わってもらえれば…」

グラウンド側からコードを引っ張ってきて校舎のスピーカーから音楽を流すためには、屋外レピーター盤というところにコードをつなげる必要があるのだが、そのコードを踏まれると大変何事になる。

だから、わざわざコードを頭上にかけてする必要がある。しかし、そのかけるための場所が、結構高いところにあるため、身長が低い目の文版は少しきついのだった。

「だいじょーぶ…きゃっ!」

精一杯背伸びをしていたとき、急にバランスを崩し倒れそうになった。

「危ない!」

その時飛び出してきたのは、宮司だ。

偶然近くでコードを探していたとき、目に付いたので助けたというのが本当だが、片思い中の文版はちょっと考えが違うらしい。


お姫様抱っこのように受け止められた文版は、顔を真っ赤にしながらあわてて降りた。

「大丈夫?」

何気ない一言。親切で言った宮司だが、さらに恥ずかしさを増す文版。

「うん!大丈夫!大丈夫だから!」

ものすごい勢いでしゃべる文版に、宮司はいう。

「…まあ、そんなにしゃべれりゃ元気っていうことだな」

そういって、元の作業に戻ろうとする。

その後ろから、おろおろするばかりの文版。

どういったらいいのか分からないようだ。

その時、後ろから豆見が言ってきた。

「ほら、今言わないといつ言うの?」

「え…でも…」

文版はモジモジしている。

「だから文版は気が弱いって言うの。前も言ったでしょ、"恋は戦争"だって」

「そうだけど…」

決心が付かないような文版は、再びコードをフックにかけようとする。

「宮司、いま時間空いてる?」

「ああ、こっちはほとんど片付いたけど」

「フックにコードかけるの手伝ってくれる?危なっかしくて見てられないから」

「分かった」

宮司は作業をいったんやめて、こっちにきた。


「ちょっと貸して」

宮司は文版からコードを受け取ると、軽々とフックに引っ掛けた。

「ほら、これで大丈夫だな」

軽くゆすって落ちないことを確認すると、宮司は戻ろうとした。

しかし、文版に袖をつかまれていた。

「…体育大会が終わったら、ちょっと話したいことがあるんだけど…」

「ん?何のことだい。今じゃ駄目なのか?」

「…ここで言うのは恥ずかしいから…」

宮司は合点して答えた。

「分かった。じゃあ、放課後な」

そういって、テントの下へ戻っていった。


「…これでよかったのかな」

「後は野となれ山となれ。何とかなるよ。とにかく最初が肝心だからね」

豆見がそういうと、文版は何か覚悟を決めたようだった。

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