第384巻
幌たちが家に帰ると、ベッドへと桜はすぐに倒れ込む。
「いやぁ、家が一番だね」
「服ぐらい脱げよ……」
玄関のカギを締め、点々と落ちている桜の脱いだ靴下や、置いたカバンなんかを拾って桜の部屋に放り込む。
「土産のかばんはちゃんと別にしてるから」
「あいよー」
そう言って、桜はベッドへ腰かける。
放り込まれたカバンをながめつつ、ぼんやりと考えていた。
「どうしたのさ」
幌は桜に聞く。
「んー、もうちょっとで高校卒業なんだなーって」
幌が桜の横に座る。
「そうだね。今が6月だから、あと半年と少しもすれば入試だな」
「と、考えるとさ。なんだかさみしくなっちゃってね」
「いいんじゃないの?」
幌は、軽く答える。
「どういうこと」
「いや、だってさ。姉ちゃんはいつも自由だし。前向きだしさ。何とかなるんじゃないかなって」
よっとと声を出し、幌は、肩に手をかけようとしている桜の手を払いのけつつ、ベッドから立ち上がる。
「だからさ、深刻に考えなくていいんじゃないか」
「そうよね、そうだよね」
桜は、考えを吹っ切ったようだ。
うん、そうだ。と呟いて、幌の後に立ち上がる。
「今日はハンバーグが良いなぁ」
「はいはい。材料見てからな」
急に元気になった桜にホッとしつつも、胸を押しつけつつもたれかかってくる桜をうとましく感じる。
そんな複雑な雰囲気のまま、幌は桜を引きずりつつ、台所へ向かった。