第37巻
第47章 体育大会 〜準備編 前日〜
体育大会の前日、それぞれの部活は、それぞれ動いていた。
「ったく。何でこんなことしなきゃならないんだよ」
コンピューター部の山門がぼやいた。
「がんばってくれよ。前まで情報部が担当してたらしいんだけど、その技術を持った先輩がいなくなったんだって」
「卒業か何かか?」
パソコンを抱えて、外へきた星井出とともに、山門と話し合っていた。
「そうらしいんだ。まあ、協力よろしく頼むよ」
「しゃーないな」
山門は、テントが張られたところの、その下に机を持ってきていた。
「そこにおいて」
星井出がそう言った。
「ここでいいんだな」
山門が確認すると、星井出はうなづいた。
「ああ、そこに置いておいてくれ」
山門は、おいてある机の上に、デスクトップ型のパソコンを置いた。
「…ふぅ」
まだ、本体だけなのに、かなり疲れているようだった。
「とりあえず、ソフトとかはいるのか?」
「まあ、『Microsoft Office Excel 2007』はいるね。関数でいろいろすることになるけど、式は大体分かってるから」
「じゃあ、本体と周辺機器が要るっていうことだな。まだ、向こうの部屋においてあるから、鈴と一緒に持ってくるよ」
「よろしく。コンセントとか、必要なものがあったら言ってくれ。出来る範囲で準備するから」
「ほいほい」
そういって、グラウンドではいろいろな準備をしている間で、数往復することになった。
「これで、最後…」
鈴も、山門のすぐ横に立っていた。
「よかったね。これで終わりだよ」
コードをつめた衣装ケースを外へ持ってきて、ようやく持ってくるものは無くなった。
「じゃあ、これからパソコンにコードをつなげていかないといけないんだ」
「…私はこれで…」
山門の言葉を聞いて、鈴はどこかへ歩いていこうとした。
その背中をつかんでいった。
「一緒にやってくれるよな」
鈴は恐る恐る振り返る。
「なっ!」
明らかに、任意といいながらも強制。
鈴はため息をついて山門の手伝いをすることになった。
そんな作業をしている横で、文版も、準備を進めていた。
「放送機器って、どこにおけばいいですか?」
公安部部長に聞く。
「ああ、中央テントだ。朝礼台が置いてあるところの、校門と反対側のところ。パソコンをいてあるところと同じテントだから、すぐ分かるって」
「ありがとうございます」
文版は、一礼してから、機器をそのテントに置きに行った。
「お二人さんとも、仲がよろしいようで」
文版は、パソコンの設定をしている鈴と山門を見ていた。
「茶化すなよ」
山門は、ケーブルにつけてある色で、どこに挿すかを覚えているようだった。
「つまり、忙しいって言うことね」
パソコンがおいてあるのは、テントの中の後ろ側。
一方、放送機器を置く場所は、その目の前になる。
「さて、コンセントが足りるかどうか…」
「どうにかなるんじゃない?」
豆見があっさりと言った。
「とりあえず、やっておこうよ。そうすれば、どうなるかわかるんじゃない?」
「そうねー」
語尾をやや下げながら、文版が答える。
二人の後ろでは、重たい荷物を持たされ、ちょっとふらついている宮司がいた。
「どうでもいいが、はやくどこにおくか言ってくれ」
「ああ、ここでいいわ」
文版は、指差した。
長机が3つつながっていた。
「へいへいっと」
一気に荷物を置いた。
放送で使うさまざまな機器を、よっこいしょという気合とともに、机の上においた。
「さて、リールは?」
「ここにあるよ」
山門が言ったところには、赤色をした延長ケーブルがあった。
タップが6つずつ、両面についており、巻き取れるようになっていた。
「たしか、100mだったはずだよ。だから、どこまでも伸ばせるはずー」
豆見がいった。
その時、鈴が文版に言ってきた。
「申し訳ありませんが、すこしばかり、のいていただけますか?」
文版は、急に言われたので足をのけた。
「ありがとうございます」
少しだけ頭を下げた。
どうやら、コードを踏んでいたようだ。
さらに、接続部分を、徹底的にラップでくるんでいた。
「わざと静電気を取り除いたものを使っているんです」
「磁石でも近づけたのか?」
「まあ、そのようなものです」
文版と鈴が話している間に、着々と準備は整えられていっていた。
空が、どこまでも透き通っていた。