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女子高と男子校  作者: 尚文産商堂
体育大会 準備編
36/688

第36巻

第46章 体育大会前にも授業


体育大会が目の前に迫っているといって、手を抜くような高校ではなかった。

しっかりと、それぞれの授業がみっちりと組まれているのだった。

その中でも、情報の授業中に、事件があった。


「今日は、インターネットについての勉強だ」

情報教師、国山嵐(くにやまあらし)が、授業の冒頭に言った。

「持ってる人のほうが多いと思うが、携帯電話からインターネットにアクセスすることが出来る。そのとき、どのようなことが短時間に行われているかを、これから説明する」

一同は、コンピューター室に集められて、集団で授業を受ける。

だが、時にいたずら好きな人もいて、そんな人がいる授業は、ごくたまにとんでもないことになる。

先生は、ホワイトボードに、簡単な図を描いた。

「いいか。まず、本人がいる。そこから発射される電波は、あちこちにあるサーバーと言われる機械を通って、目的のところに到達する。そこに到達すると、ちゃんとあると言うことを伝える電波が再びあちこちのサーバーを通って、きみたちのところへかえってくる」

そして、図をまとめた。

「じゃあ、試しにやってみよう。すでにパソコンは付いていると思うから、学内ネットワークと書かれているアイコンをダブルクリックだ」

そのとたんに、ネット回線が落ちた。


数分後、授業は口頭や体を使ったものになっていた。

「ネットかなぜ飛んだのか、俺は知らん。だが、その原因だろうと思うことをしたやつは、後で前に来い」

幌たちは、グループを作り、インターネットの実習をしていた。

先生が出した指示は、インターネットを模式的にあらわすことだった。

「そんなややこしい指示をわざわざ出さなくても…」

「でも、これも授業の一環だと思ってやらないと…」

ぶつくさ文句を言っている宮司をなだめていたのは、星井出だった。

「で、どうやって模式的にあらわせって?」

幌が聞いた。

「それは、各班に任せるみたいだよ。自分達は、どうにかして先生に認めてもらうことを目標にしないと…」

最終判断は、常に先生が行っていて、先生が認めてくれないと、欠点になる可能性があった。

さらに、欠点になったときの追認考査のテストはかなり難しく、大学3年で習うようなレベルの問題が普通に出てくるらしい。

「…うわさなんだけどな、追認考査の問題には、習ってないものが出てくるらしいんだよ。それを含めて、60点以上じゃないと認めてくれないんだと」

雅が班の全員に伝えた。

「とまあ、そういうことなんで、がんばらないといけない…めんどー」

その後、15分でインターネットの概念をどうにか理解し、それをレポート用紙に急いでまとめた。


授業が終わる10分前、代表して幌と雅がそのレポート用紙を提出した。

「先生、出来ました」

「1号だな」

それだけ言うと、先生は半ば奪い取るようにして、レポートを見た。

それからギロリとこちらをにらみつけた。

「これを書いた人の名簿は?」

「一番後ろになります」

幌はビビリながら言った。

それから数秒間、本当に時間が止まったかのように長い数秒間があった。

おもむろに机の上において、先生は二人のほうに向かって言った。

「合格だ。チャイムが鳴ったら帰ってもかまわない」

「ありがとうございます」

雅はほっとした表情を浮かべていった。


チャイムが鳴るまでには、どうにか全員がそれぞれの班で作ったものを先生に提出していた。

コンピュータールームから出て、幌は歩きながら伸びをした。

「やれやれ…やっと終わった」

「この時間が一番いやなんだけど、それでもパソコンが好きなんだよね」

幌のすぐ横を歩いている永嶋が言った。

「お前の場合は、部活が好きじゃなくて、一緒に部活しているやつが好きなんだろうが」

永嶋は宮司の言葉に少しばかり反論した。

「そんなんじゃないよ。たしかに山口は好きだし、現在進行形で付き合ってるけど、それは部活で知り合えたからであって…」

「はいはい、そこまでね」

幌がやめさせた。


それから教室に戻って、いつものように授業を受けて、それからそれぞれの家に帰った。

帰り道、少し曇ってきた空を見上げながら歩いていると、幌に呼びかける声があった。

「あ、あのさ…」

幌がその声の主を確認しようと思って振り返ると、琴子がいた。

「どうしたんだ」

幌は琴子に近づいた。

「あの…言いにくいんだけど…一緒に帰ってくれない?」

いつもは大阪弁みたいな口調なのに、急に標準語風のイントネーションになっていた。

「別にかまわないけど…」

それから、幌と琴子は並んで帰った。


バスを降り、電車に乗り込んで数分すると、突然何も無いところで止まった。

車両の中には幌と琴子だけ。

「停止信号です。しばらくお待ちください」

車内アナウンスが、静かに流れる。

「しかたないね」

そういって、1分か2分ぐらい待った。


電車がゆっくりと動き出す。

「動いた」

琴子は、電車に合わせて話し出す。

「…なあ、体育大会の後って、空いてるんか?」

「俺か?一応今のところ、予定は無いはずだけど…」

幌が続いて何か言おうとしたのをさえぎって、琴子が続けた。

「ここだけの話やねんけど、すこし打ち上げをしようと思うんや。来てくれへんか?」

「前にも聞かれた記憶が…」

琴子は幌に迫った。

「かまわへんよな」

幌はうなづいた。

琴子は元の位置に戻って、再び話し始めた。

「体育大会まで、あと5日しかないんやで。何かトレーニングみたいなんしてるんか?」

幌は考えてから言った。

「トレーニングって言うほどでもないけど、家の周りを時々走ってるよ」

幌はさらっと言った。


それから電車を降り、琴子の家の前までくると、琴子が家に入った。

それを見届けてから、幌は家に帰った。

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