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第349巻
「お、これいいかもな」
幌が、ひょいとカゴからつまみあげたのは、ぬいぐるみだ。
タグを見ると、ジュゴンと書かれている。
ただ、本物のジュゴンよりも、デフォルメされた可愛らしい容姿になっている。
「おー、いいじゃん」
幌の後ろから歩いてきた島永が、適当に言う。
だが、島永もよさそうだと思ったのか、値段を見てみた。
「1980円かあ。ちょっと高いな」
「高いけど、買う価値はあるな」
「でも、幌がぬいぐるみに興味があるとは思わなかったな」
「俺の為じゃないさ」
「なら、誰の為」
島永が幌に聞く。
「部活のお土産だよ」
「ふーん」
島永は幌の言葉を信用していない。
だが、あえて何も言うことはなかった。