表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女子高と男子校  作者: 尚文産商堂
誕生日会編
33/688

第33巻

第40章 誕生日会 後編


翌日、幌と桜は、歩いて15分ほど下ところにある、公民館へ行った。

すでに、見知った顔が居た。

「幌たちも、招待されたんだ」

普段着で現れたのは、星井出だった。

「そうさ。何か持ってきたのか?」

星井出の右手には、大丸のマークがかかれた紙袋が握られていた。

「ああ、誕生日祝いに、ちょっと、な。そっちは、阪急か」

「そうそう。誕生日祝いには、高級品を。別に、そうは思わないんだけど、やっぱり、何か送ろうと思ってね」

そういって、幌と桜は、星井出に阪急のマークがついた袋を見せた。

「で、文版は阪神で買ったというわけだな…」

幌は、文版が誰かと話している後姿を見つけ、その左手に握られた紙袋のマークを見た。

「大丸、阪神、阪急。キタにある百貨店のすべてがここに集ったと言うことだな」

「まあ、新しく百貨店も出来続けるって言う話しだし。この順番も入れ替わるんじゃないか?」

幌たちは、主人公の登場まで、そんなことばかり話していた。


数分後、スッと部屋が暗くなり、一番前のステージのみが照明を浴びていた。

「えっと、お集まりの皆さん。本目は、どうもありがとうございます」

雅が、とりあえず、あまり似合わないスーツを着て登場していた。

明らかに、メモ用紙を見続け、時に間違えていた。

「えー、ご多亡かと思いますが、しばし忘れて、お楽しみください」

ここで、司会者が変わった。

「それでは、これより、手野町市立男子高等学校教諭、高啓槻先生に代わります」

雅は、高啓先生にマイクを手渡すと、どこかへ去った。

高啓もスーツ、ネクタイ、革靴でビシッと決めてきていた。

「本日は御日柄もよく……」

まるで、結婚式だった。


そんなスピーチが終わると、当人たちが再びステージに立ち、高啓の音頭で乾杯をした。

先生たち大人はシャンパン。

子供たちは、オレンジジュースやいろいろだった。


乾杯が終わると、再び部屋に明かりがともった。

そして、パーティーは、佳境に入った。


数十分たったとき、再び明かりが消え、ステージにライトが照らされた。

そこには、美しくドレスアップされた琴子と雅がいた。

「きれー…」

桜は、本当に驚いているようだった。

和服で登場した彼女たちは、本当に美しく見えた。


とりあえずのスピーチが終わると、再び部屋に電気がともった。

「おめでとー」

ステージから降りてきた二人に、参加者が誕生日を祝う。

それぞれが、思い思いの品々を持ってきているらしかった。


幌たちの前に来たときには、いろいろな人たちからさまざまな、色とりどりの紙袋を渡されていた。

「阪急、阪神、大丸、『松坂屋』、『高島屋』、『近鉄』、『京阪』、『伊勢丹』、『三越』、『西武』に『そごう』。そうそうたる面々だね」

紙袋から読み取れるマークを、幌が一つ一つ丁寧に読み上げた。

死角になって読めない店もあったから、実質はもう少し多いだろう。

「これ…誕生日おめでとう…」

幌が、突然、紙袋を恥ずかしそうな顔をして琴子に渡した。

「ありがと」

琴子は、笑って受け取った。

そのすぐ横では、雅が桜からプレゼントを受け取っていた。

「ありがとう。何かお返しをしないといけないね」

それを聞いて、互いが赤い顔をしていた。

「いいって、そんなこと…」

尻すぼみに語尾が消えた。

しかし、そんなことに気づかなかった雅は、そのまま話を続けていた。


そして、夜も更けて、散会となった。

すでに帰っている人も多く、残った人もかなり疲れている状態だった。

「では、これで終わりにしたいと思います。みなさん、本日はお集まりいただいて、まことにありがとうございます」

数えるほどしかいない会場の中で、雅が言った。


そして、帰っていく最中の道。

普段着に着替えた琴子と雅、同じ方向に帰る幌と桜。

街灯の明かりだけがところどころを映し出していた。

「ねえ、恋って、どうして起こると思う?」

桜が唐突に聴いた。

「どういうことだよ」

幌と雅が同時に聞き返した。

「恋心って言うのは、いったいいつから出来るのかって言うこと」

いつもはおちゃらけた感じの琴子も、このときだけはいつに無く真剣な顔をしていた。

男子二人は悩んでいた。

しかし、答えが出なかった。

「分からないな。男の俺たちは」

女子二人は、微笑んでいった。

「それは…」

少し前に出て、男子側に振り返った。

「ずっと、その人のことを思っているって言うことなんだよ」

「え?」

二人は、一瞬何のことか分からないようだった。

しかし、少女は、男を手のひらで転がすがごとく、ただなぞを残してそのまま走っていった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ