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第301巻
部屋にあるテレビで、天文部の島永宗谷は除夜の鐘を聞いていた。
「おお、鐘が聞こえた」
たまたま見ていたテレビの除夜の鐘と、外から聞こえた鐘の音が3秒の差でテレビから聞こえてきた。
「いやぁ、風流だねぇ」
「風流って……」
宗谷は、両親のコメントに、そばをすすりながら答える。
遠くで鐘の音が再び聞こえる。
そして、きっかり3秒後、またテレビからも聞こえてくる。
「いいねえ、除夜の鐘。煩悩が消えていくみたいだよ」
「いいんじゃない?」
父親の言葉に、宗谷はあっさりと答え、そばのつゆを飲みほした。