第3巻
第4章 勉強合宿
翌朝、幌は桜の分の朝ご飯も作って、先に学校に出かけた。桜は、その1時間後におきた。
「あれ〜、幌がいないな〜」
桜がぼんやりとおきると、すでに、幌は出かけた後だった。時計を見ると、午前7時を少し回ったころだった。
「ああ、そうか〜。幌は、先に合宿に行っちゃったんだね。男の子って、大変なんだね〜」
そして、桜は、台所を見ると、幌が作った朝ご飯が、置いてあった。
「お、ちゃんと作ってくれてる」
桜は、そのまま座り、ご飯を食べた。
(そう言えば幌は、もう出発している頃だよな〜。大丈夫なんかな)
幌は、そんな桜の心配をよそに、バスの中で眠りこんでいた。3時間かけてのバスの旅で、途中に休憩が2回ほど入るだけで、残りは、全てのバスの中と言う事になっていた。
「やってらんないよ」
幌のすぐ横に座った、永嶋山門が言った。
「でも、しなきゃならないんだろ?」
幌が目をつむりながら言った。永嶋が返した。
「そうだから、こうしてここにいるんだ。もしも、そんなことしなくて済むんなら、こんなところにいないよ」
「そう言えば、女子高側も今日出発して、ほとんど同じ日程なんだろ?」
「そう言えば、そんな事もいっていたような気がするな〜」
後ろの方から、そんな声が聞こえてきた。
「そんなところに転がり込んでいたんだな」
「遅刻しなかったんだな、星井出包矛」
星井出が、幌に言った。
「中学校のころからずっと一緒だもんな」
「こちら側は、腐れ縁だと考えているがな」
幌は言った。
「そんな事言うなって。な?」
「かと言っても、やっぱ、遠いよな〜。この県の北部にあるんだってな?」
「そうだよ。高校から、4時間弱かかるんだからな。ここから、後…」
幌は、腕時計を見た。
「2時間と30分ぐらい」
「果てしなく長い道のりだ〜」
「がんばらないと。どんなところでもな」
「うげ〜」
星井出は、そのまま後ろに下がって見えなくなった。
「さて、俺も寝るよ。ついたら教えてくれ」
「はいよ」
幌はそのまま、窓に身をもたらせるような形で、眠りに落ちた。
それと時を同じくして、女子高ではバスが発車したところだった。
「やれやれ、ようやく発車したのね」
とても眠そうに、あくびをしながら、桜は言った。
「でもね、桜さん、時が経てば必ず出て行くものですよ?」
桜の横の椅子に座っている、明らかにお嬢様と分かる山口鈴が言った。
「そうだけどね…」
「そう言えば、桜さんは、どうして、ここの高校に入ったのですか?」
「ああ、どうしてか?」
「そうです」
「さ〜てね〜。やっぱり、近かったからって言うのが、一番の理由だね。それに、結構いろいろなところに先輩が出て行っているからね」
「なるほど」
「じゃあ、山口の入学理由は?」
「わたくしですか?わたくしは、親の強い要望がありましたの。それが理由ですね」
「…それだけ?」
「いいえ、もうひとつ理由があります。わたくしの家系は代々、私学出身です。しかし、わたくしの学力がその私学に達していなかったために、やむなくこの高校にしました」
「そっかー。まあ、確かにプレッシャーはかかるわね。そんなに、期待されているんでしょ?」
山口は、ちょっと顔に影がかかったように見えた。しかし、すぐに消えた。
「ええ、確かに、プレッシャーに弱いので、大変でした。しかし、両親は、たまには、こんな子供が家系から出ても構わないだろうと、そう言いまして、入学を許可してくださったのです」
「なるほどね〜」
桜は、そう言って、いろいろな世間話を始めた。そうして、バスは、合宿先へと何の障害物も無く、走り続けて行った。
第5章 到着
先に出発していた幌達の方が、先に到着するのは当たり前の話で、さらに、それから遅れる事1時間半。桜達のバスが合宿場所に到着するのも、考えてみれば当然の事だった。
桜達が降りて着た時には、すでに幌たちが荷解きをすましていて、昼食を食べているところだった。
「ねえ、どんな子が好みなの?」
桜が、山口に聞いた。
「それは、恋愛対象という事と取っていいのでしょうか?」
「そうよ〜。他に何があると言うの?」
「わたくしには分かりかねます。そのような事は考えた事も無かったので」
「あ、そう。そりゃそうか。さすがに、お嬢様だものね。こんな合宿に参加する事自体が、初めてじゃないの?」
「いいえ、そんな事はありません。小学校の修学旅行や林間学校。それに、中学校に入ってすぐにあったオリエンテーションを兼ねた合宿にも行かせてもらいました」
「ふ〜ん。なるほどね。じゃあ、枕投げとかは?」
「わたくしは見ているだけでしたが、枕は頭の下に置くもの。あのように、投げるような事は、わたくしには出来かねます」
「そうか」
桜は、山口と一緒の部屋になっていた。5人部屋で、残りの3人は、後ろの方で、大きな荷物を持ってふらふらしていた。
「やれやれ、先に行きましょ」
「そうですね」
彼女達は、そのまま、狭い急な階段を上がって、彼女達の部屋に向かった。