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女子高と男子校  作者: 尚文産商堂
夏休み 最終日編
29/688

第29巻

第36章 夏休み 〜最終日編 文版家/氷ノ山家/星井出家+宮司〜


「ふぁ〜〜〜〜」

大あくびをしているのは、寮に戻ってきた文版だった。

「どうしたの?」

「あまり昨日寝てなくて…」

相部屋の氷ノ山が、文版に聞く。

「昨日まで、実家に帰ってて、全部親がやってくれてたから…」

机と平行におかれている2段ベッドの上から、顔を覗かしていた。

枕を、ぎゅっと抱きしめていた。

「あー、そういうことね。まあ、大体分かるけど…」

その時、部屋の戸が開いた。

「つまりは、体重でも増えたっていうこ…」

入ってきた宮司の顔面には、枕がめり込んでいた。

「まったく」

氷ノ山は、冷静に受け止めていた。

文版は、ベッドの上から睨みつけていた。

「だーれーがー、太ったですってー?」

宮司は、枕をとりながら答えた。

「別にそんなこと言ってないだ…」

次は、本人が飛んできた。


あちこちにバンソウコを張りまくった宮司ができたのは、10分ほどしてからだった。

「なんで、俺まで…」

一緒に来ていた星井出も、一緒に殴られていたらしい。

2人とも、満身創痍で部屋へとはいってきた。

「同罪!」

文版は、かなり怒っているようだった。

「ところで、なんで二人来たの?」

氷ノ山が、聞いた。

2人は、同時に答えた。

「暇だったから」

「ソウデスカ…」

氷ノ山は、とりあえず、口に出した。

そして、男子は2段ベッドの上へ、女子は椅子に座った。

「でも、さっきのは宮司が悪いよ。女の子に体重の話をするのは、デリカシーがない人だと思われて、嫌われる原因になるんだよ」

氷ノ山が、二人に言った。

「今後は注意します…」

2人とも、そのことは痛いほど分かっていた。


2人は、それから部屋を見回した。

「寮の部屋って、男子も女子も同じなんだね」

宮司が、言った。

「そうなんだー。じゃあ、今度男子寮に遊びに行っても大丈夫?」

「…規則に反しない限りな」

文版が言った言葉に、すこし考えてから答えた。

「結構きれいなんだな、俺たちの部屋と違って」

「…計画変更。ゴミ袋持って遊びに行くわ」

氷ノ山が言った。

「ついでに、部屋の掃除も頼むよ」

星井出がそう伝えると、女子2人は、顔を見合せて再び言った。

「…やっぱり、やめとこうか」

「そうね。片づけるのって、結構面倒だし」

男は、聞いて話し合った。

「少しぐらいは、片づけておいた方がいいみたいだな」

「だな。帰ったら、大まかに片づけておこう。いつでも来れるように」

「だな」

2人は、そう結論付けた。


それから、1時間弱。

4人は、適当に話し合っていた。

いろいろなこと。

ただ、暇だったからという理由以外にも、何かありそうだった。

ふと、星井出が腕時計を見た。

「あっと、もうこんな時間だね」

「じゃあ、もうそろそろ…」

星井出と宮司は、2段ベッドから降りて、扉を開けた。

「じゃ、また」

「うん」

文版と氷ノ山は、手を振って、見送った。


扉が閉まってから、部屋に残された2人はため息をついた。

「…やっぱり、だめなのかな……」

「あまり気にしていないような、そんな感じだったよね」

氷ノ山は、机に教科書などを広げていた。

そのすぐ横では、頭を抱えた文版がいた。

「やっぱり、四六時中気になるって言うのは、相手のことが好きだって言うことだと思うんだけど、相手が、好きだって言うことを確認することができないから…」

「じゃあ、聞けばいいじゃん。ストレート、直球勝負」

氷ノ山が文版に言った。

「私のことが、好きですかって?そんな急に聞かれても答えられないと思うな…」

「じゃあ、その逆は?」

「逆?」

文版は、氷ノ山にすぐに問い返した。

「そ、私はあなたが好きですって。そう言えばいいんじゃない?」

文版は、指をもじもじさせて考えている。

「でも…」

「恋は、突撃よ。戦争よ」

そう言いながらも、氷ノ山は続けた。

「でもね、心の準備がないと、どうしようもないわね。だから、突撃をかけながらも、外堀を少しずつ埋めていくことが大事よ」

文版は、すっかり考えていた。


一方、女子寮から出て、すぐ横にある男子寮に帰っている二人も、同じような状態だった。

「…つまりは、お前は氷ノ山に恋してるって言うことか?」

星井出がうなづいた。

「ったく。じゃあ、男は度胸だ。突撃をかけてみるか?」

「それで玉砕したらどうするんだよ。立ち直れなくなるかもしれないし…」

宮司は、考えた。

「じゃあ、ちょっと誰かに聞いておこうか。明日は始業式だから、幌にでも聞けばいいだろうよ」

「そっか…」

星井出は、ただ、空を見上げていた。

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