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第265巻
2分ほどして、放送部の声が聞こえてくる。
「ただいまの結果をお伝えします」
騒がしかったグラウンドが、水を打ったごとくに静かになる。
「1位、紅組」
その声が聞こえた瞬間、桜達は大喜びだ。
なにせ、紅組は幌がいるクラスのことだからだ。
そのまま体育大会は、紅組が優勢のまま続き、そして、終わった。
打ち上げは、今年も料理部の部室で行われた
「いやはや、幌。うまいこといったやないの」
琴子が幌のすぐ横で、ホットプレートを見ながら、幌に言った。
「たまたまさ」
「そのクールなところもええ」
普通なら、居酒屋で酔っただろうとか突っ込まれるようなことを、笑いながら琴子は幌に言い続ける。
「そんなことよりも、ホットケーキ焼き上がったぞ」
「先輩、私が配っておきますね」
幌の横に来たのは、1年生で幌の後輩になる岩嶋阿古だ。
「ん、ありがと」
遠くの方で、そんな光景を見つめる人がいた。
岩嶋は、そんな見つめている人、料理部部長である原洲甲中へとホットケーキを渡しに向かった。