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第251巻
タタンタタンという心地よい音が、一行を包んでいた。
海をしっかりと堪能した幌たちは、夕日に染まりゆく空と海を後にして、電車に乗っていた。
人はまばらで、クロスシートの車内で静かにぼんやりとしていた。
「どうだった?」
眠っているみんなの間、横に並んで座っている幌と琴子が、話していた。
「たまには海もええな」
琴子が遠くなりつつある海を、ジッと見つめながら幌に答えた。
「だな。来年も、このメンバーで来たいな」
幌が楽しげに話しかける。
みんなは、静かに眠っている。
「わ、私は、幌と一緒に……」
言いかけたとたん、反対側から電車が突っ走った。
衝撃で、電車内にはすれ違いの衝撃音が満ち溢れる。
通り過ぎてから、幌が聞いた。
「何か言った?」
だが、琴子は次の言葉を言うことができなかった。
「別に、何にもあらへんよ」
タタン、タタンとリズムよく、幌たちはそれぞれの思いを乗せて、海からいつもの日常へと、戻っていった。