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女子高と男子校  作者: 尚文産商堂
夏休み 部活動編
22/688

第22部

第29章 夏休み 〜部活動編 天文部〜


桜は、8月5日に学校にいた。

部室であるプラネタリウム室には、桜ともう一人の姿があった。

「あ〜あ、なんで私こんなところにいるんだろ…」

「そりゃ、天文部という部活に入ったからでしょ」

偶然その場にいた、アニメ研究部の雅は言った。

「というより、なんで雅がこんなところにいるの?」

「ちょうど、アニメ研究部もしていてね、暇になったから遊びに来たんだ」

「だったら、黙っといてよね。私は今忙しいんだから」

そう言いながらも、椅子二つを使い、片方に座り、もう片方には足を乗せて弁当を食べていた。

「…その格好で弁当を食べることがか?」

「ほうはよ(そうだよ)」

おにぎりをほおばりながら、あっさりと言い切った。

「やれやれ…それよりも、なんで他の人たちがいないんだ」

雅は、周りを見回しながら聞いた。

「当然じゃん。今日は私だけしかいないんだよ」

「へ?なんで」

「だって、今日は暇になったから、遊びに来ているようなものだもん。それに、天文観察ができるのは、基本的に夜になってから。こんな真昼間にするわけないじゃん」

桜はおにぎりを飲み込んでいった。

「はあ、そうですか…」

雅は、弱弱しげに言い、周りを見回した。

「さすがに、よくわからない機械ばかりだな」

そして、雅はそのうちの一つを触ろうとした。

そのとたん、桜は言った。

「それ、触ってもいいけど、そのあとのことは私は知らないよ」

その瞬間、雅の手は引っ込んだ。

「じゃあ聞くけど、この機械ってなんなの?」

「天文写真の保管データ。それを保存しているハードディスクだよ。その中には、これまでとってきた様々な写真データが保存されてるの」

「へー」

雅は、素直に驚いて、言った。

「じゃあ、桜が撮った写真も、この中にあるの?」

桜は、少し恥ずかしそうに言った。

「えっと…あることにはあるけど…」

突然、下を向いて、弁当を食べる手を休めた。

「どうしたの?」

「う〜ん…あんまり見せるようなものじゃないし…」

「でも、俺は見てみたいんだよ」

雅は、なぜか桜に強く言った。

桜は雅の真意を測りかねていた。

「ま、いい…よね」

桜は、立ち上がってその機械を操作した。

次々と、星が現れた。

「すごいね」

雅は、ゆっくりと言った。

「うん…」

桜は雅に対して適当に返した。


ほどほど経ったとき、雅は言った。

「ありがとな。なんだかすっきりした」

それだけ言うと、雅は自分の部室へ戻った。

桜は、変な気分だったが、とりあえず再び弁当を食べ始めた。


家に帰ると、桜は氷ノ山に電話してみた。

「…ということがあったんだけど、それってどういうことだと思う?」

「単純に言うと、きっと、好きになっちゃったんだね」

「こんな短期間で?」

あっさりという氷ノ山に、桜は驚きを隠せないようだった。

「恋になるのに期間は不要よ。一目惚れって言うのもあるぐらいじゃない。そんなのがあるぐらいだから、いつ好きになっても不思議じゃないわよ」

「うーん…じゃあ、どうするべきなの」

悩む桜に、氷ノ山は言った。

「まずは、男の心を知る必要があると思うわね。幌にでも話したら?」

「幌に…なんだか嫌」

「…そんなこと言っても…じゃあ、別の人に頼るとか。たとえば、文版とか」

「そうしてみるね。ありがと、相談乗ってくれて」

「いいよ、いつでもどうぞ」

そして、電話を切ると、次に文版に電話をかけてみた。


「もしもし」

「あ、さくちゃん。どうしたの」

すぐに、文版が軽い口調で出てきた。

「実は…」

桜は、部活の時に起こったことを話してみた。

「…ということがあったんだけど、これってどういうことだと思う」

「単純ジャン。恋だよ、恋」

「うん…やっぱりそうかな…」

「でも、やっぱり、男の人に聞くほうがいいんじゃないかな。そのほうがもっとよく分かるだろうし」

「たとえば…」

「ほろすけだね。彼だったら、相談に乗ってくれるんじゃないかな。それとも、また別の人に相談してみる?」

「…幌に相談してみるね。ありがと」

「どういたしまして」

そして、桜は電話を切り、自分の部屋から出た。


料理をしている幌は、突然の相談に少し気乗りしなかったが、とりあえず答えていた。

「う〜ん…本人に聞いてみるのが一番だと思うんだけど…」

「幌ならどう考える?」

桜は必死に聞いた。

「そうだな…きっとさ、雅はそんなことを余り考えてないと思うよ。友達か、そんな感じで考えてると思うね」

幌はとりあえず、正直に話した。

「だったらいいんだけど…」

「とりあえず、ご飯が出来るから。それを食べながらゆっくりと考えてみたらどう」

「…そうする」

桜は、それだけ言うと幌が作った晩御飯を、もそもそと食べた。


部屋に戻ると、桜はパソコンをつけた。

何か考えていたわけではなかった。

「…やっぱり、単なる友達っていうことでいいのかな」

なんだか、少し残念な感じがした。


1週間後。今度はほかの天文部部員も集まっての部活があった。

しかし、その中には、雅はいなかった。

あまり、うれしくなさそうな桜を見ていた部長がいった。

「どうした井野嶽。調子が悪いんだったら、早く帰ってもかまわんが」

「あ、いいえ、そうじゃないんです」

それでも、なんだか調子が悪そうに見えた。

部長は、桜の肩を叩いて、言った。

「じゃあ、少しの間休んどけ。他の事は、おれたちがやっておくから」

「…ありがとうございます」

語尾は、ほとんど聞こえなかった。

桜は、近くに置いてあったいすに座って、ため息をついた。

それを見ていた、同級生の澤井陽菜さわいひなが、桜に近づいて言った。

「ねえ、桜」

「どうしたの…」

「なんだか、今日すごく変だよ。大丈夫?」

すぐ隣に、澤井が座った。

桜は、大きな天体望遠鏡を見ながらいった。

「じつは、なんだか恋をしちゃってるらしいの」

その瞬間、遠くの方で誰かが吹く音がした。

「へ?」

「2度も言わせないでよ…」

「ごめんごめん、なんだか信じられなくて…そっか。桜にも恋人が出来たんだねー」

澤井は笑いながらいった。

桜は少し膨れていた。

遠くの方で、部長が腹を抱えて笑い転げていた。

「ぶちょー、少しばかり失礼では?」

「ああ、ごめん。でも、なんだか面白くて。自分の部活の中で誰が一番最初に恋人ができるかって考えていて…」

「不謹慎だと思います…」

澤井は、つぶやいた。

桜は、いろいろと考えていた。

「で、その相手って誰なの?もう、告白とか済ました?」

澤井は矢継ぎ早にいろいろと聞いた。

「まだ…だけど……」

「さっさと告白しないと、誰かに取られるかもしれないよ」

「うーん…」

桜は、すっかり混乱してしまった。


いったん家に帰った桜は、結局何が何だかわからなくなっていた。

「…告白、するべきなのかな……」

桜が夕食の場で、ぼやいた。

幌は、箸をおいて、言った。

「悩んでないで、たまには突撃をかけることも必要だよ。それとも、俺が聞いておこうか?」

「ぜひとも、よろしくお願いします…」

幌はため息をして、言った。

「じゃあ、まずは夕食を食べることだな。話はそこからだ」

幌はそう制してから、ご飯を食べるように言った。


ご飯を食べ終わると、桜は自分の部屋に戻り、幌は雅にメールを送っていた。

「誰か好きな人はいないか」という内容の、匿名のメールを送り届けていた。

すぐに、そんなメールにもかかわらず、返信をしてきた。

「…こいつ、結構危ないな…」

幌はそんな感想を漏らしてから、その中身を読んだ。

「好きな人なら確かにいます。同級生の桜って子なんですが、その子に気があるかどうかわかりません。調べてくださるならば、とてもありがたいです」

「……なんだ。心配して損した。でも、どうなんだろう。こんな単純なメールで引っ掛かる奴っていうのは、結構後々危ないような気がするんだが…」

とりあえず、桜にそのことを伝えた。


「それって、本当?」

「ああ、本当だ。とりあえずメールを送って調べた」

「じゃあ、雅は私のことが…」

幌はうなづいた。

桜は、そのまま部屋に戻った。

そして、扉を閉めた。

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