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女子高と男子校  作者: 尚文産商堂
夏休み 部活動編
20/688

第20巻

第27章 夏休み 〜部活動編 放送部〜


8月に入り、まず最初に部活動をしたのは放送部だった。

3日には、高校の放送室に集まり、出品作品について話し合っていた。

「さて、この高校の放送部として、とりあえず、こんな作品を作ってみたんだけど…」

文版がほかの部員に対してそれを提示した。

「…恋愛系か、これは受けが良くないんじゃないか?」

宮司が言った。

しかし、豆実は反論した。

「そっかなー、これはこれでいいと思うよ。ただ、多少の修正を加えたらっていう条件がつくけどね」

「ほんと?」

文版は怪訝そうな顔をして聞いた。

「本当よ、私がうそでもつくと思う?」

豆実が聞くと、文版は首を横に振った。

豆実は笑って答えた。

「ちょっとこれ借りるね。次はいつ部活をする予定?」

「予定上は、明後日だけど、私の家でよかったら明日もいけるよ」

「文版の家かー、どこにあるんだ?」

「電車とバスで1時間弱ぐらいかかるかな?」

「けっこう遠いんだね」

豆実と文版は話し合った。

「じゃあ、そこでいいや。目印とかはないのか?」

宮司が文版に聞いた。

「家の目印?う〜んと…あ、そうそう。近くに何とか大学の付属病院があるよ。枚方駅のすぐそばだけど」

「枚方駅近くの付属病院と言えば……」

豆実は考えていた。

「『関西医科大学付属枚方病院』があるんじゃない?」

宮司が言った。

「そうそう、そんな名前だった」

「じゃあ、枚方市の改札前で集合ね」

文版が決めた。


部室でて、鍵を閉める時に宮司が言った。

「そういや、何で枚方駅ってすぐに言わなかったんだ。何とか大学付属病院って」

「頭で最初に出たのがそれだったからよ。わかったから別にかまわないでしょ?」

「そうだけど…」

「だったらそれでよし!さあ、帰りましょ」

そして、文版がそういうと、みんな帰った。


翌日、『京阪電気鉄道株式会社』(京阪電鉄)の『枚方市』駅、改札口前。

文版以外の二人は、そこにいた。

「…遅い!文版は何をしているんだ」

「まあまあ、彼女もいろいろ忙しいんでしょ」

怒る宮司を豆実がなだめた。

そのとき、文版が来た。

「ごめーん、ちょっと遅れちゃった?」

「ちょっとじゃない!30分も遅刻だ!」

宮司は、怒りを爆発させたが、詫びれる様子もなく文版は手を合わせてウインク気味に言った。

「ごめんね。その代わり、ご飯おごるから」

文版はそういった。

豆実も続けた。

「ほら、栄美もそう言ってることだし、行こうよ」

宮司は舌打ちをしながらも、とりあえずついて行った。


10分ほどすると、一戸建てでクリーム色をした家が見えてきた。

「今日は親がいないから、遊び放題だよ」

「いや、放送部部員として、今日はここにいるから…」

文版のにこやかな表情に対して、冷やかに宮司は言った。

「いいじゃないの、とりあえず、入って入って」

文版は、無理やり二人を家の中に入れると、そのまま部屋へと案内した。


「とりあえず、座って」

部屋に入れると、文版はすぐに床に座らせた。

コタツのような机が部屋の中央に置かれており、広々とした窓からの光がさんさんと降り注いでいた。その光の一部はベッドの上にも降り注がれていたが、夜は暗くなるだろうから関係なかった。

ベッドと逆側には、こちら側に背表紙を向けた本がずらりと並んだ本棚があった。

「で、どんなふうにしたの?」

文版は豆実に聞いた。

「とりあえず、恋愛の要素は一切を省いたの。ぶつかった後の話も少し動かしたわね。まあ、もともとの文章を大きく動かしたわけじゃないから、最後のオチを大きく変えたわね。でも、そのぐらいかしら」

豆実が答えた。

「そっか…じゃあ、この方針で行くとして、だれがどの役をするかだよね。主人公に、友人が二人、か…」

文版が悩んだ。

「友人は、二人とも女子っていう設定だから、私たちのどちらかがしないと…」

「ちょっと待て。主人公は男限定か?」

宮司は、二人に聞いた。

二人は同時に答えた。

「当然でしょ。他に誰がいるの?」

宮司はため息をついた。

「わかったよ。それじゃ、二人はどっちにするか決めてくれ。おれはそれまでこの本棚の本でも読んでおくさ」

そういうと、宮司は立ち上がり、本棚を眺め始めた。

一方、文版と豆実はどちらがどっちをするかで話し合っていた。


2分ほどすると、とりあえずの決着がついたようで、読み合わせをするということになった。

「わかった」

宮司はとりあえず、さっきまでいた場所に座った。

「で、さっき決めた人たちどおりに読み合わせをするっていうことで」

そういうと、台本を机の真ん中に3人が読めるように置いた。

そして、それぞれの役割のセリフの部分を読み始めた。


8分ほどすると、とりあえず読み合わせは終わった。

「じゃあ、これで今日は終わりっていうことで…何かほかに意見がなければっていう話だけど」

文版が2人に聞いた。

「べつに、俺はないけどな」

宮司が答えた。

「わたしも〜、別にこれで構わないと思うよ」

豆実も言った。

文版が聞いた。

「じゃあ、これで終わりっていうことで、予定よりもかなり早いけど、大丈夫?」

「昼ごはんをこのあたりで食べようと考えていたんだけど、どこかにそんな店あるか?」

不安げに、宮司がきいた。

「大丈夫、私が作ってあげるから」

「へ?」

自信満々に答える文版に対して、宮司と豆実はかなり心配そうに聞いた。

「それこそ大丈夫かって聞きたくなるんだが…」

「だいじょうぶ〜。私って結構料理うまいんだよ。でも、ほーちゃんほどじゃないけどね」

文版は断言した。

「ほーちゃん?」

「幌のことだよ」

宮司がきいたら、豆実が答えた。

「あ、そっか…」

そして、文版は部屋から出て行った。

豆実と宮司は、本棚の本を読んでいた。


「とにかく、どうやってこんなに持ってきたんだろうな」

宮司は、本を選びながらいった。

「古本屋で買ったんじゃない。裏にシール貼ってあるよ」

豆実に言われて宮司が見ると、たしかに『古本市場』と書かれたシールが貼ってあった。

しかし、その中のいくつかは、そのような名札シールもはってない本だった。

「なんだろ…」

宮司は少し開けてからあわてて閉めた。

「どうしたの?」

「なんでもない!なんでもないから、頼むから聞くな!」

宮司は顔を真っ赤に染めて、その本をあわてて本棚に戻した。

その時、文版が部屋の中に帰ってきた。

「ご飯できたよ…あれ?どうしたの」

「お前さ、こんな本はもっとだれの目にもつかないようなところにだな…」

文版は宮司が持っている本を見て笑って言った。

「あー、それね。別にいいじゃないの、薔薇本とか。それに個人の趣味の範囲で買ってるだけよ。だから、構わないでしょ」

文版は堂々と言った。

「それよりも、ご飯冷めちゃうから、早く来てね」

それだけ言うと、再び部屋から出て行った。

豆実は宮司に聞いた。

「ねえ、薔薇本ってどんな本?」

「…詳しくは自分で調べろ。もう、何も言わん……」

それだけ言うと、宮司は部屋から出て行った。


3人は、リビングに降り、文版が作った昼ご飯を食べていた。

「…どう?」

文版は、2人に心配そうに聞いた。

「うまいよ」

「うん、とってもおいしー」

豆実と宮司はそう答えた。

「そう、よかったー。実は食べてもらうのって、家族以外初めてなんだよ」

「これだったら、他の人たちに食べさせても大丈夫だよ」

豆実は言い切った。

「そう?じゃあ、次は幌にでも食べさせてあげよーかなー」

「がんばってね。でも、幌だったら酷評されるのも覚悟しておかないと。ああ見えても、相当食についてはうるさそうだからね」

「うん!」

その間、宮司は黙々と食べ続けた。


それから、再び文版の部屋へと戻って、本棚に置いてある本の話をして、そのまま帰る時間になった。

「それじゃ、帰るよ」

宮司が文版に伝えた。

「そう。豆実は?」

「昨日メールで話した通り。今日は泊まらせてもらうよ」

豆実は楽しそうに言った。

「じゃあ、これからミヤミヤを駅まで送るから、ちょっと家にいてもらえる?」

「いいわよ、がんばってね」

豆実は何かを考えているようだったが、文版と宮司は何かわからなかった。


2人は、駅までの道すがら、いろいろと話した。

「そういえば、こうやってミヤミヤと話すのも、初めてかも」

「どうかな」

文版は、いろいろと考えていた。

だが、そのすべては今は時期尚早だと思われた。

そして、他愛もない話をしながら、駅にたどり着いた。

「じゃあ、また明日だな。午前9時ぐらいでいいんだな」

「構わないよ。じゃあ、またね」

宮司が改札を通って行くその背中を、さみしそうに文版は見ていた。


家に戻ると、豆実が待っていた。

「おかえり、どうだった?」

「どうだったって、どういうこと」

「はっきり言って、宮司のことが好きになりつつあるんでしょ」

豆実のはっきりとした言葉に、文版はたじろいだ。

だが、その気持ちは確かに考えていたことだった。

「…そうかもしれないけど……」

「だけど、言う勇気がないんでしょ。もしかしたら嫌われるかもしれないと思って」

文版はうなづいた。

「だったら、それとなく話を聞けばいいんだよ。好きな人はいるかとか、どんな人が好みとか」

「それを聞けるんだったら苦労はないよ…確かに、ミヤミヤのことは、中学校のころから知っていて、それで……」

「とにかく、そうやってやってみたら?外れた時は、また別のやり方を考えたらいいじゃない」

豆実は、あっさりといった。

文版は何となく自信がついたようだった。

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