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第194巻
授業が終わり、放課後となった。
「じゃあ、私部活行くね」
「あいよ。お疲れさん」
琴子が手を振って、桜を見送った。
桜が天文部の部室であるプラネタリウムに行くと、なぜか幌がいた。
「あれ、幌どうしたの」
「姉ちゃんさ、ちょっといいかな」
カバンを近くの棚において、幌のそばへ向かう。
「どうしたの。家じゃダメなの?」
「実はね、犬を預かってくれって言われてね」
「どこの犬?」
「近所。ほら、青山さんいるだろ。ゴールデン飼ってる」
「ああ、お隣のね」
青山さんは、すぐ横に住んでいる、近くの国立大学の教授らしい。
定年退官してから、家でずっと物理の研究をしているらしい。
たまに中学校や小学校、高校へ来ては、その研究を簡単な言葉にして、教えている。