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女子高と男子校  作者: 尚文産商堂
夏休み 別荘編
17/688

第17巻

第24章 夏休み 〜別荘編 中川家〜


翌日、幌は一番最初に起きて、机で勉強を始めた。

日が出てからしばらくした時のことだった。

ふと、外を見た幌は、不思議な光景を見た。

それは、あのすり鉢状の穴のあたりから緑色の光が表れている光景だった。

「なんだろう…」

幌は気になったが、それよりも夏休みの宿題を優先させた。


午前9時ぐらいになると、だいたい起きてきた。

幌は、朝ごはんの席で、そのことを話した。

「…ということなんだ。なんだと思う?」

「それでは、今日見に行ってみますか?」

鈴が、さりげなく提案してみた。

「確か、本日からあの家の方々いらっしゃる予定になっていたはずです。顔見知り程度ですが、それでも、よくパーティーなどに誘っていただきましたので…」

「それがいいな」

永嶋が賛同して、ほかの人たちもそれに倣った。


ご飯を食べ終わると、さっそくその家を見に行った。

すでに、その家の人たちが到着しており、警察に連絡をしているところだった。

「どうかなされましたか?」

鈴が、素知らぬ顔で聞いた。

「突然家がなくなったんですよ。何かにえぐり取られたかのような状況で…」

「それは大変でしたね。少しばかりわたくしの家の部屋が空いていますので、お泊りになられてはいかがでしょうか」

鈴が、話している当主らしい人と話していた。

「鈴、この方は?」

永嶋が鈴に聞いた。

「ここにあった家の当主、中川隆俊さんです。彼は、中川株式会社の社長でもあるのです」

「中川株式会社って…あの、巨大企業の?」

「そうですよ」

鈴はあっけからんといった。

「かく言う山口さんも、山口系列の総合社長の娘ではないですか」

中川がはにかみながら言った。

「総合社長?」

「山口系列の会社の独特な社長の呼び名です。系列各社社のトップを社長と言いますが、それと区別するために、持ち株会社の社長をすべての系列の社長を束ねる社長という意味を込めて、総合社長ということにしているのです」

中川が話した。

「はぁ…」

永嶋が答えた。

鈴はそんな中川に伝えた。

「とりあえず、家のほうに連絡を入れてみます。空き部屋があれば、そちらのほうにお泊りください」

「ありがとうございます。どうしようか悩んでいたところなんですよ」

そう言って、鈴は別荘に連絡を入れた。


別荘に、中川家の人々を招き入れると、別荘で働いている人たち全員で出迎えた。

「いらっしゃいませ。ようこそ」

幌たちは、驚いた。

「俺たちが来た時には、こんなことなかったな…」

「あのときは、ここのメンバーがあまりいなかったのです。それで、このような歓迎ができなかったのです」

鈴が説明した。

そして、中川のほうを向いて言った。

「とりあえず、部屋は3階にあります。どうぞ、ご自由にお使いください」

「ありがとうございます。それでは、さっそく…」

中川家の人たちは、荷物を持って部屋へ向かった。

鈴は、それを見届けてからみんなに伝えた。

「わたくし達も、昼ご飯が必要ですから、30分後に昼食としましょう」

そして、みんなバラバラになった。


昼ご飯を、全員で食べ終わると、子どもたちはすぐに現場に向かった。

中川家の息子である、中川歩、中川静も、みんなと一緒についていた。


別荘があったところに到着すると、すでに警察が現場封鎖をしているところだった。

「どうする?」

「正攻法で行こう」

幌が聞くと、歩が答えた。


警察は、黄色いテープを張って、誰も入れないようにしていた。

幌たちが近寄ると、向こう側から2人組の警察の制服を着た人が表れた。

「君たち、ここに入ってはいけませんよ」

片方が言った。

「中川家子息、中川歩だ。この土地の所有権を有している。そこをのいてもらいたい」

たったそれだけだったのに、警官は敬礼をして一行を見送った。


テープの内側に入ると、幌が歩に聞いた。

「なんだったの?」

「ここの土地は、平安時代に中川家の祖先が天皇から下賜された土地なんだ。今でも、中川家は相当な権力を持っているというあかしでもある」

「へぇー」

幌は素直に驚いた。

その間にも、穴のところにたどり着いた。


穴は非常に深かったが、底が見えないほどではなかった。

「どうする」

幌は聞いた。

「降りてみよう。何かあるかもしれないし」

「何かってなんだよ」

「それを探すんじゃないか」

歩は幌にそう答えて、さっさと降りて行った。


斜面は砂でできており、ここの山と一致していた。

「どこまであるんだろう」

幌が滑りながら言った。

「それよりも、何でこんなことになったんだろう…」

歩がつぶやいた。

「この辺りは、昔鉱山だったんでしょ。だったら、そのときの坑道が崩れたのかもしれないわね」

千夏が答えた。

「それほど大規模だったのか?」

幌が聞いた。

「そう聞いています。ただ、閉山されてからその全容を知る者は誰ひとりと生きていませんが」

鈴が答えた。

その間にも、底に近付きつつあった。


一番底辺にたどり着いたとき、永嶋が何かを持ち上げた。

「これって、なんだろう」

それをみんなに見せると、星井出が永嶋から借りて突然なめた。

周りが驚いている間にも、星井出は言った。

「これ、黄銅鉱だよ」

「なめただけでわかるの?」

氷ノ山があきれて言った。

「話してなかったっけ?俺の能力は、なめただけでどんな物質かが分かるんだ。なかなか便利だろ?」

「…あまり人前ではしてほしくない能力だね」

「それよりも、銅鉱山だったんだね」

千夏が周りを見ながら言った。

「江戸時代、ここから銅がとれたんでしょう。しかし、明治以降閉山されてからはそのことを知る者はいなくなってしまった。わたくし達が、久しぶりにそのことを明かしたのです」

鈴が少し空想をしている顔で言った。

「とりあえず、ここから戻ろう。底まで来てしまったわけだから、後は登るしかないだろ?」

歩が全員に提案し、そのまま別荘まで歩いて戻った。

黄銅鉱は、永嶋が持つことになった。


家に帰ってくると、何やら騒いでいた。

「どうしたの?」

すぐ近くを通りがかった中川隆俊に聞いた。

「聞いてなかったか?今日、この家にすごい有名人が来るんだ」

「有名人?」

歩が問い返した。

「この国の首相、中井新次郎第97代内閣総理大臣だよ」

「へっ!何でそんな人がこんなへんぴなところに?」

静が驚いた。

「わたくし達、山口家は中井首相と親戚関係なんですよ。ですから、彼もこの別荘によく遊びに来るのです」

「やっぱり、すげー奴と友人関係になっているようだな…」

幌は、誰にも気づかれないようにつぶやいた。

そして、別荘のあわただしい中に、幌たちは戻って行った。

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