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第154巻
1時間ほど経つと、みんなダレてきて、勉強よりも雑談に花が咲いた。
「なあ、せやかてな、慣れたら出来るっていうもんでもないやろ」
「いや、それが違うんだよ。慣れないと、できないって言ったほうがいいかもしれないけど。もちろん、俺自身の主観だけどな」
「うーん…やったら、ちょっとくらいやってみたろうか」
「それがいいって。やってみなよ。やってみないとさ、どんな感じになるのかっていうことが、全然わからないだろう?」
幌と琴子が、そんな感じで、教科書を開いたままにして頼んだものをつまみながら、何かを話していた。
「…何話してるんだ」
そこへ、トイレから帰ってきた雅が聞いた。
「料理の話」
二人は同時に答えた。
「勉強は?」
「…いいじゃん」
「よくない」
「…えー」
琴子と幌が順々にいう。
「しかたないや、まあそれが目的でここに来たんだからね」
そういって、幌は再び教科書とシャーペンを持って、ノートに悠然と何かを書き始めた。