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女子高と男子校  作者: 尚文産商堂
夏休み 別荘編
15/688

第15巻

第22章 夏休み 〜別荘編 出発直後〜


翌日、幌と桜は準備万全で家の前にいた。

ほかの人たちも、続々と現れた。

「ここで間違いなかったな」

「そうよ」

一番最初にいた幌と桜がお互いに確認した。

それから数分の間に、残り全員が現れた。


そして、8時30分ちょうどに、山口を乗せた小型バスが安全運転で走ってきた。

幌たちの待っている場所の前でとまると、山口が窓を開けて言った。

「お待たせしました。どうぞ乗ってください」

それを聞いて、みんなとりあえず必要と思う荷物を持ってバスに乗り込んだ。


中は、とても快適だった。

「リクライニングソファーって初めて〜」

桜が早速それに座った。

一人一づつ割り当てられていた。

さっそく、背もたれを動かして遊んでいるようだった。

「これから別荘があるところまでは、3時間ほどかかります。途中で休憩をはさむ予定ではいますが、トイレに行きたくなったら言ってくださいね」

山口が最後のほうは微笑みながら言った。

そして、バスは発車した。


近くの高速道路に入り、少しした時、山口は動いた。

今まで座っていた席から永嶋のすぐ横に座った。

「えっと?」

永嶋が戸惑った。

周りはそれを穏やかに見ていた。

何が起こるか予想はついていたからだ。

「あの、今日はどうですか?」

「今日?まだ始まったばかりだからな。少しわからないな」

「もしよろしければ、ほんとうによろしければ、後で、少し私の部屋に来ていただけませんか?」

「それまで覚えていたらな」

そう言って、顔を伏せてしまった。

山口は、どうしようか悩んでいるようだった。


途中で渋滞に巻き込まれた影響で、数時間遅れで到着した。

「やっと到着した〜。疲れたー」

桜が言った。

「もう少しです。とりあえず、荷物は後で部屋にお届けいたしますので、どうか、そのままにしておいてください」

山口がそう伝えた。

そして、バスが完全に止まると、みんなを外へ出した。

「ようこそ!山口家の別荘へ!」

山口が言った。

やたらでかい宮殿風の建物だった。

「でっけー」

星井出が驚いて言った。

「とりあえず、中に入ろうよ」

氷ノ山が言った。

そのとき、山口によく似た少女が建物の中から現れた。

「お姉さん、ようやく来たんですか?」

「千夏、先に来ていたんだね」

「山口の妹?」

幌がきいた。

「そうです。わたくしの妹で、山口千夏といいます」

「千夏です。よろしくお願いします」

ペコリと礼をした。

「こちらこそ」

とりあえず、全員が答礼をした。

「さて、立ち話も何なので、とりあえず中に入りましょう」

鈴がみんなに言った。

そして、別荘の玄関に入った。


「すご…」

雅がつぶやいた。

たしかに、外見とたがわぬほどの豪華絢爛さだった。

「あのシャンデリアってどれくらいしたの?」

「あれは少し安かったはずですね。確か、250万ほどでしたはずですよ」

鈴が言った。

「250万って…私たちの1年5カ月の生活費になるよ…」

桜が言った。

「大変ですね。とりあえず、それぞれのお部屋をご用意させていただきましたので、そちらのほうへご案内します」

鈴が伝えた。

そして、千夏のほうに向くと、言った。

「千夏は先に自室へ戻ってなさい」

「わかった」

つまんなさそうに言った。

しかし、とりあえず千夏だけ別行動をとった。


一行が案内されたのは、女子の部屋と男子の部屋だった。

「別々にさせていただきますね。それでよろしいと思いましたが?」

鈴は、その場にいる全員に伝えた。

それでも、部屋は隣同士だった。


「じゃあ、入らせてもらうね〜」

桜が、朗らかに言った。

入った途端に目にしたのは、ダブルサイズのベッドだった。

二つのベッドが隣り合わせになっておかれていた。

「全員がベッドで寝れるようにと、そう思ったのですが…」

鈴が一歩離れた所から心配そうに言った。

桜は、鈴に向かって言った。

「とってもいいよ!楽しくなりそうな予感がする」

「それは良かったです」

桜の言ったことで、ようやく鈴は安堵したらしい。

「男の部屋も同じなの?」

「はい、その設計になっています。ただ、ベッドは多くなっています」

「そうじゃないと、全員がベッドで寝られないからな」

幌が、そう返した。

「じゃあ、荷物をまとめたら、玄関に集合っていうことで」

そのまま、幌がみんなに提案した。

そして、それぞれの部屋に入った。


「とりゃー!」

桜が、ベッドにヘッドスライディングをかました。

「何してんのや」

琴子があきれ顔で言った。

「こんな豪華なベッドって初めてだからさ、一度してみたかったのよ〜」

「…さよか。ま、好きにしたらええわ。それよりも、山口の姿が見えへんけど…」

「山口だったら、別荘の自分の部屋で寝るって。それに、あの事・・・があるからね」

「確かにな。やったらしゃーないか」

「うんうん」

琴子と桜は勝手に納得していた。


幌のほうも、同じような作りになっていた。

「あ〜あ」

雅が、ベッドに腰かけていた。

「どうした?」

幌が、近くにあった机に向かって勉強をしていた。

「別荘って初めて来るからさ、結構ドキドキなんだよ」

「それは、俺も同じだって。別荘なんて、金持ちしか持ってない印象があるからな」

「確かにそれはあるな」

雅は、妙に納得した。

「そういえば、永嶋はどこ行ったんだ?」

「あいつなら、今頃山口のところだろうよ」

星井出が、幌たちを見ながら言った。

「ああ、なるほどね…」

幌と雅は見合わせて苦笑いした。

「無事にいくかな……」

「さあ、ね」


永嶋と鈴は、二人だけで、広い部屋の中にいた。

窓の外は、未だ明るく、ローテンポの曲が少しだけかかっていた。

「で、何の用なんだ?」

永嶋は、努めて明るく聞いた。

「…わたくし、ううん、わたしね。同じ趣味を持つ人を見たことがなかったんだ」

鈴は、少し離れたところで話し始めた。

「でも、高校に入って、わたしと同じ趣味を持つ人を見つけた」

「それが、自分か」

「そう。わたし、それがきっかけで、これまでいろいろと言われ続けてきたの。でも、私と同じ趣味を持つ人が、すぐ身近にいた…」

鈴は、永嶋の目を見て言った。

「わたしと、ずっと一緒にいてほしいって、そう思えるようになったの…」

永嶋は、山口に向かって歩き始めた。

「だから…ずっと一緒にいてくれる?」

「…そんな急に言われても…」

永嶋は、頭半分ぐらい小さな鈴に言った。

「最終日まで、この返事を待ってくれないか?そのときにまでには自分も気持ちの整理をつけておきたいから」

「わかった」

鈴は、それだけ言った。

「じゃあ、自分は戻ってるから」

永嶋はそう言って部屋から出た。

部屋には、鈴だけが残された。


永嶋が、男の部屋に戻った時、真っ先に雅がきいた。

「どうだった?」

「どうだったって、どういうことだよ」

「告白されたんだろ?」

永嶋は、開いていたベッドに腰かけた。

「まあな」

男たちは、永嶋の近くに座った。

「どんなふうにだ」

星井出が聞いた。

「一生一緒にいてほしいってさ。それだけだよ」

「へぇ〜」

幌たちがそれを聞いて、いろいろと夢想しているようだった。


「さて、そんな場合ではなかった。あの準備をしておかなければ…」

幌と星井出が立ち上がり、部屋の外へと出て行った。

「あの準備って?」

「さあ」

残された人は、何のことかわからず、ただ、首をかしげるだけだった。

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