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第148巻
みっちり1時間ほど数学をすると、目が痛くなってきたようだ。
「あー、なんか疲れたな」
「ったく、なんでこんなややこしい計算をしなきゃならないんだよ」
ブツブツ文句を言いながら、問題をどんどん解いている幌がいた。
「お、お前ら勉強か」
そこに、幌の横から覗き込むように、担任の高槻が入ってきた。
「先生、出てくる問題を教えてください」
「それは出来ないだろ」
先生は笑いながら言う。
「それで、どこやってるんだ」
「複素数についてです」
「iを虚数とした場合、a+bi=0の時、どうなる?」
先生は、ぱっと問題を出した。
「えっと、a=b=0になります」
幌がそれに答える。
「じゃあ、(a+bi)(c+di)は」
「ちょっと計算が…」
星井出がちょっとどもりながら言う。
「ac+adi+bci-bdです」
「そうだ。まあ、それぐらい出来れば大丈夫だろ」
先生はそんな意味深な言葉を置いて、別の生徒のところへ歩いて行った。
「…つまりどういうことだ」
山門が聞いた。
「このあたりがテストに出るって言うことだろ」
幌が言うと、次の教科書を取り出した。