第140巻
第142章 帰国[1]
レポートを提出した次の週の日曜日、いよいよアクサンがイギリスに帰る時がやってきた。
「関空まではついて行くからね」
桜がアクサンに言う。
ちょうど皆が見送りに行きたいと言っていたが、厳正なくじ引きの結果、クラス代表として鈴、桜、琴子だけが見送ることになった。
鈴が用意してくれた車は、高校の前まで来ていて、暖気運転を始めていた。
運よく梅雨だというのに晴れ渡り、雲すらないほどの快晴だった。
「忘れ物は?」
まだ来ないアクサンを待っている間に、桜が二人に聞く。
「幌と原洲先輩が来るって言ってたんだけど…」
「俺らならここだ」
幌が車の中から声をかける。
窓を下におろすと、すでに二人とも車に乗り込んでいた。
「いつの間に……」
「姉ちゃんが遅いから、先に乗り込ませてもらったんだ」
「でも、よくこんな車用意できたな」
「わが社は、さまざまな業種をカバーしていますので」
鈴が、自慢げに原洲にこたえる。
「そりゃいいや。卒業旅行とかも頼めるのかな」
「旅行会社なら後で電話番号教えますよ。わたくしからと窓口の人に申してくだされば、安くしてくれるはずです」
「OK、よろしく頼むよ」
その時、氷ノ山に連れられて、アクサンが車のところに来た。