第133巻
第135章 週末旅行[7]
「ただいまー」
桜は、バスに乗り、有馬温泉から帰ってきた。
「おかえり」
「おじゃまー」
桜のすぐ後ろから、琴子も入ってきた。
「琴子も?」
「お土産があるんだって。私から渡そうかて言ったんだけどね、そのまま渡したいって」
「へー。どんなの?」
「これや」
そう言って、琴子が渡したのは、金泉を模した入浴剤だった。
「ありがたく使わせてもらうよ」
幌は琴子に言うと、入浴剤をもってお風呂場へ歩いて行った。
「それで、どうするの?」
桜は、琴子に聞いた。
「…家に帰るわ。他のオミヤは別の機会にでも渡すことにするわ」
「そっか」
桜は引き留めようとしなかった。
「幌によろしく伝えといて」
「分かった。じゃあ、またね」
桜だけが琴子を見送り、玄関の扉が閉められると同時に、幌が戻ってきた。
「あれ、もう帰っちゃったの」
「そうよー。琴子も疲れたんだって」
「残念」
それだけ言って、幌は台所へ向かった。
「そうそう、私からも幌にお土産」
「なに?」
「炭酸煎餅」
桜は、炭酸煎餅が入ったビンごと居間のテーブルの上に置いた。
「じゃあ、テレビ見ながらでも食べるか」
幌は言いながら、フライパンの準備を進めていた。
「今日のご飯はー?」
桜は幌にひっつきながら聞く。
「味噌汁、白米、サラダに鶏肉のソテーの予定」
「いつも通り、おいしそー」
「だったら、おいしく作るから、のいてくれ」
「えー…」
嫌がる桜をひっぺはがし、幌は油をとりだして、ソテーの準備を始めた。