第132巻
第134章 週末旅行[6]
翌日、泊っていたホテルをチェックアウトし、街中をぶらつきながらバスの時間を待った。
ぶらつきながら、琴子が桜に耳打ちした。
「なあ、幌ってどんなのが好きなんやろか」
「幌の好きなの?」
桜は少し考えて、琴子に教える。
「あんまり特定の種類が好きだっていうことはないけど、強いて言うなら、食べ物とかかな」
「食べ物か…神戸牛とか?」
「あえて、そこいきますか」
わざわざ神戸牛を選ぶという琴子に、桜はちょっと驚いた。
「そりゃ、ねえ」
琴子は、桜に濁して言った。
「…そうそう。幌はね、高いものでなくても十分だよ。プレゼントは"気持ち"だって、いつも言ってるし」
「せやかて…」
「嫌われていることを恐れているようじゃ、いつまでたっても片思いのままだよ。たまには、勇気を出してみようよ」
「…せやな。誕生日って、いつやったっけ」
「来月だよ」
桜はニヤッと笑って教えた。
「だから、それまでに選んだら大丈夫。こっちの分とは別にね。こっちで買った分は、部活の時にとか渡せばいいじゃん」
桜が言った。
「せやね。うん、そーするわ」
琴子は、晴れ渡ったような顔をしていた。
そのすぐ横を、鈴が山門の為のお土産をいろいろ買っていた。