第122巻
第124章 家出[5]
「ありがとうございました」
列の最後に並んだ鈴と山門だったが、運よく最後の3つを買うことができた。
プリンの容器を入れてもらったパックを手に提げながら、山門が鈴に言った。
「買えてよかったね」
「本当にね」
行きの疲れからか、鈴は少し元気がなさそうに見えた。
「大丈夫?少し休もうか」
「ううん、大丈夫だから」
山門に笑いかけながら、鈴が言った。
「休みたくなったらいつでも言えよな」
山門がそう言うと、鈴は軽くうなづいた。
それから、いろいろと話しながら山門の家の前にまで来ると、車が一台止まっていた。
「誰の車だろ」
「…多分、お父さん」
山門が独り言を言うと、鈴がそれに合わせるようにボソッと言った。
鈴が言うと、山門たちがいるほうのドアが開き、中から長身の男性が出てきた。
スーツを着ていて、いかにもどこかの社長という貫禄を醸し出していた。
「昨日、お電話をした山口広管です。永嶋山門さんですね」
「そうです」
広管の姿を見て、鈴が半歩下がって山門の陰に隠れようとした。
「鈴がお世話になりました。迎えに来たんですが…」
「なんだか嫌がってるような感じなんですが」
山門が自然に体を動かし、広管の視線から鈴が見えないように遮った。
「そうですか…」
残念そうな表情を浮かべ、広管は言った。
「お父さん…一緒に食べる?」
そんな父親を見て、鈴が山門が持っていた袋を見せた。
「でも…」
「ちょうど3つ買えたんです。おひとついかがですか」
山門が広管を家の中へ誘った。
「なら、少しお邪魔させていただきましょうか」
なんとなくほっとした表情を浮かべて、広管は山門と鈴について家の中へ入った。