120/688
第120巻
第122章 家出[3]
その日の夜に、電話がかかってきた。
一番近くにいた、永嶋の母親である香里が受話器を持ち上げて応対する。
「はい、永嶋です。ああ、ちょっと待ってくださいね」
受話器の送話口を手で押さえて、2階にいる山門と鈴を呼んだ。
「山門、鈴さん。電話よ」
「誰から?」
山門が、2階から大声で聞く。
「山口さんから」
香里が、山門に受話器を投げ渡す。
「はい、只今変わりました」
「こちら、山口広管です。そちらに、娘の鈴はいませんか」
「おりますけど…家に帰りたいとは思ってないようですよ」
山門がすぐ横に立っている鈴の顔を見ながら、受話器の向こうにいる鈴の父親に話をした。
「…まだ、怒っているんですか」
「親に黙ってプリン食べられたって言うことですからね。食べ物の恨みは怖いですよ」
「…明日、朝一に買いに行きますんで、許して欲しいと伝えてもらえますか」
「ちょっと待って下さいね」
山門は、受話器の送話口を抑えて鈴にさっきの話を伝える。
「えっとね、ちょっと替われる?」
「いいよ」
一旦、広菅に伝えてから、鈴へ受話器を渡す。