第115巻
第117章 仮入部期間[2]
あちこちに部活の張り紙が貼られるようになると、毎日のお昼の放送にも部活紹介が出てくるようになる。
「今年もか」
「そりゃ、毎年同じようなもののくり返しさ」
幌は、星井出と教室で話していた。
まだ教室に先生が来るには時間があり、けっこう教室も騒がしかった。
お昼ごはんを食べ終わったばかりと言うこともあり、弁当がまだ机の上に置きっぱなしという人も少なくなかった。
「星井出は確か…」
「情報部。大丈夫、もう誰が入るかって言うのは決まってるから」
「本当か、えらく早いんだな」
「毎年同じさ。書類審査をして、入部を決めるんだ。学校全ての情報にアクセスできる権限を持っているから、それだけ厳重に決めないといけないんだよな」
「大変そうだな」
「幌は、料理部だったな。誰かはいりそうなのか?」
幌はため息気味に話す。
「いや、あてが全くないから、誰が入ってくれるかも分からん。入ってくれれば万々歳だよ」
そう言っていたが、その顔には、誰かはいってくれるに違いないという確証が浮き出ていた。
授業の時間はすぐに終わり、あっという間に放課後になった。
「そいじゃ、俺はさっさと部活に行くよ」
幌は教室にいた友人達に早々に別れを告げて、料理部の部室へ向かった。
他の人たちも、仮入部期間だけは、すぐに部室へ向かうことにしているようだ。
「こんにちはー」
幌が扉を開けると、見たことがない人が2人、コンロの傍らに立って部長を見ていた。
「ああ、やってきた。紹介するよ、2年生の井野嶽幌だ」
「こんにちは、えっと、どちらさまですか?」
カバンを空いているテーブルに置いて、幌は部長達に聞いた。
「入部希望者だよ」
部長から紹介を受ける。
「身長が高い方が沢入員子で、小さい方が岩嶋阿古だ」
「よろしくお願いします、先輩」
幌よりも二回り以上小さな彼女が言った。
ほとんど間を置かずに、沢入も同じような言葉を言う。
「ああ、こちらこそよろしく」
幌は、そう言って二人のことをいろいろ聞きながら、フライパンの準備をしていた。