第106巻
第110章 2度目の4月
「うっう~~ん……」
桜がベッドの中で伸びをする。
体が伸びきると、布団を跳ね飛ばして立ち上がった。
「今日から2年生かー」
「どうでもいいけど、もう朝ごはんできてるよ」
幌がすでにコーヒー片手に桜を起こしに来ていた。
「わかった」
そのまま、桜と幌は、居間へ向かった。
トーストとコーヒーという簡単な朝ごはんを食べると、制服に着替えて二人とも学校へ向かった。
1日だが、部活がある日になっているのだ。
料理部の部室である家庭科室に到着した幌は、すでに付いていた先輩たちに挨拶をしておく。
「おはようございます」
「ああ、おはよう。今日は忙しいぞ」
「確か、新入生が学校に来る日でしたね」
「登校日と言ってやりなよ。そんな回りくどい言いかたじゃなくてさ」
現部長になった原洲が幌に聞いた。
「今日はここに人が来れば作ってもらうけど、来なければそのまま帰ることになるはずだから」
「わかりました、じゃあ、準備だけはしておきますね」
幌はそう言って、皿や調味料を取り出した。
桜が向かったのは天文部が通常活動をしているところで、2年生だけが集まっていた。
「あれ?先輩たちは?」
「まだ来てないよ」
島永と澤井が、天体望遠鏡の確認をしていた。
「1週間ぶりだから、一応確認ね。この状態でみると簡単に目がつぶれるけど」
澤井があちこちの操作盤をいじりながら言った。
「黒点観察とか言って、白い紙を用意してもらって、昼間に動かす許可を取ったんだ。誰も来なくてもそれをしておけば問題ないだろうさ」
島永が持っていたのは白紙の画用紙でレフ板としても使えそうな感じだった。
「これに映せば問題ないさ」
すでに太陽へ向けられている望遠鏡の接眼部から十分に離したところに置くと、しっかりと黒い点が見えた。
「問題は、誰が来てくれるかっていうことよね」
桜がそこを言った。
誰もその答えに答えはしなかった。