第10巻
第15章 反撃
全員分の武器としてのフライパンが無かったため、二人一組になって行動することになった。
「結局、俺とお前か…」
「もっと喜んだってええんやで」
「素直に喜べない…何でだろう…」
幌は、琴子と並んで歩いていた。
「素直や無いな〜。こんなべっぴんと二人っきりなんやで」
琴子は、何も考えて無いように言った。
「でも、どこから誰が出てくるかわからないからな。そんな状況で、よく元気でいられるな」
「あたりまえやんか。こんなときに元気やあらへんかったら、いつ元気になればええねん。細かいこと考えてんと、さっさと進めばえーやん」
かなり軽いテンポで歩いていた。
すると、T字路にたどりついた。
「あれ?これって、どっちに行けばいいんだろう」
幌が言った。
「多分、こっちやな」
幌の腕を引っ張ってすごい勢いで飛ばした。
そのとたん、誰かとぶつかった。
「あ、すいませ…ん……」
それは、敵だった。
銃を後頭部に突き付けられて、冷や汗が出ていた。
「学生だな。その制服から見て、1年生か」
「だったら、何なんだ」
幌は強がった。
「ひとつ聞きたいことがある。この学校に関することだ……」
情報部では、そのやり取りをすべて聞いていた。
「はじめて聞いた…」
「じゃあ、今回のこの事件は、それが狙い?」
「そう言うことだろうな」
情報部と公安部の部長同士が話し合っていた。
「…とりあえず、資料を探してみる。話し合うのはそれからだ」
それだけ言った。
ほかの場所では、どうにか攻撃を終わったところだった。
「…聞いたこともないな」
幌は、その犯人の言葉が信じられないようだった。
「そうか。じゃあ、もう興味はねえ。さっさと死んじまいな」
そして、銃の引き金に指をかけたとき、犯人は崩れ落ちた。
「大丈夫?」
「助かったよ、姉ちゃん」
「やっぱり、幌は私がいないとだめなんだね〜」
そう言って、相手の両手首をひもで縛っていた。
「姉ちゃん、そのひもは?」
「ああ、これね。なんか落ちていたから勝手に使ってるのよ。さて、とりあえず、情報部に戻りましょ」
「う、うん…」
そして、幌、桜、琴子、雅は情報部の部室へと戻っていった。
「ただいま〜」
桜が、情報部の部室の扉を開けてもらっていった。
犯人たちは、まとめて玄関のところに置いてきたおり、そのまま警察が引き取ることになっていた。
「おかえりなさい。遅かったわね」
「少し手間取ってね」
氷ノ山と桜が話している横で、深刻そうな顔をして情報部と公安部の部長が立っていた。
幌が二人に聞いた。
「どうしたんですか。浮かない顔して」
「幌君と琴子さんは既に知っていると思う。あの犯人たちの目的についてだ」
「あの事ですか…」
幌が情報部部長に言った。
桜が聞いてきた。
「ねえ、あの犯人たちの目的が分かったの?」
「分かったのはいいけど…聞いたことがないものだったから…」
「幌、どうしたの。あの人たちの目的って何なのよ」
「ついさっき、情報部のコンピューターのすべてを調べてみた。これまでの学校の歴史を調べてみた。すると、そのうわさが流れていた時期があったことがわかったんだ」
「では、あれは本当に?」
「分からない。このことが収まってから調べる必要がある」
桜は、絶えず聞いてきた。
「ねえ、何なのよ」
「この高校の下には、宝物が埋まっているという噂だ。その宝物は、この世界のすべてのと身よりも高価なものだということらしいんだが…」
「いかんせん、われわれの情報部のコンピューターにはそのうわさしかないっていうことだ」
「では、そのうわさというのは?」
「この高校にあるといわれている出入り口を通り、地下深くへと歩いて行くと、そこに宝物があるというものなんだが、そのうわさ自体がつい10年ほど前までまことしやかに受け継がれていたというものだ」
「当時の公安部の資料によれば、その探検と称する授業からの脱出行為が目立っていたという記述がある。簡単に言うと、サボりの材料として使っていたようだ」
「実際にはあったんでしょうか」
「なかった。どこを探しても、謎の扉は存在しなかった。ただ、男子高が分から女子高側に通じる通路、料理部の一行が通って来たあの通路だがね、あれを謎の通路として思っていた人たちはいた事は確かのようだ」
その時、再び校内電話が鳴った。
体育館では、犯人たちがいら立っていた。
「校内探索隊は、全滅したようだ…」
「どうやってなんだ。こっちは銃器類を所持していて、攻撃力では勝っていたというのに」
「簡単なことだ。相手の方が強かったということだろう。だが、こちらには人質がいる。早々攻撃を仕掛けてくることはできないはずだ」
「それもそうだな…」
そう言いながら、犯人たちは銃をなでていた。
その光景を見ていた放送部の一行に対して、警察から連絡が入った。
「はい、文版です」
「ああ、君たちに頼みたいことがあるんだ。これから情報部に対して、体育館へ敵に気付かれずに誘導をしてもらいたい。そのための直通回線を開きたいんだ」
「分かりました。では、追って連絡します。10分後に、再び連絡をいただけますか」
「了解した。では」
そう言って、電話を切られた。
「……ということなんです。可能でしょうか」
「分かった。放送部の部室には校内電話が3本あっただろ」
「はい、一応ありますが、残り二本がつながるか分かりませんよ」
「一旦テストをしておこう。電話を切るから、そしたら別のでつないでくれ」
「分かりました」
そして、文版は、情報部部長といったん電話を切り、それからすぐに別の回線で通した。
「もしもし、放送部です」
「つながったようね。了解した。では、警察の電話が来るまで、その回線はこのままにして。警察から連絡が来たら、すぐに受話器同士をつないで」
「分かりました。では、それまで待機しておきます」
それだけ言って、受話器を別のところへかけておいた。
警察から連絡があったのは、きっかり10分後だった。
「はい、放送部体育館部室です」
「ああ、こちらは警察ですが、情報部とは?」
「これからお繋ぎします」
そう言って、受話器同士でうまく話せるように受話器を置いた。
「もしもし、警察ですが」
「すいません、情報部部長をしています者です」
「いきなりで申し訳ありませんが、すぐに本題に入らせていただきます。すでにうかがっているかもしれませんが、警察は、突入を計画しています。現在、体育館の放送部部室とは対角線上にある体育館職員室から、犯人たちと交渉をしています。しかし、その要求には理不尽なものも多く、なかなか満たせそうにありません。そこで、うまく雨音にまぎれて体育館に突入することに決定しました。その時の突入の際に、あなた方に協力要請したいのです」
「内容は理解しました。私たちも、これ以上の展開は望んでいません。もしもそれが最善の方法であると断言なされるのであれば、私たちは喜んで従いましょう」
「現時点では、これが我々が取るべき最良の策であると断言し、それを変えることはありません」
「では、簡単に打ち合わせさせてもらいます。情報部がすべきことは、あなた方警察一行を、体育館まで安全かつ迅速にお届けするということですね」
「その通りだ。作戦開始時刻は今から1時間後。その5分前に再び連絡を入れる」
「分かりました。では、その時を楽しみに待っています」
そして、情報部部長と警察の代表者は、同時に受話器を置いた。
放送部部員は、それを確認してから、受話器を元の位置に戻した。