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女子高と男子校  作者: 尚文産商堂
プロローグ
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第1巻

ここは、この世界のどこかにある場所。いや、ないかもしれない。そのような場所。


第1話 始まりはいつも…


いつもと変わらない場所、いつもと変わらない時間、いつもと変わらない目覚まし時計の音。布団の中から右手を出し、その音を止める。ゆっくりと伸びをして、起き上がる。

(もう朝か…)

彼は、今日から高校生だった。横を見ると、布団の中身は空になっており、すでに、起きた形跡だった。


彼は、それから1分ぐらいしてようやく起きた。立ち上がると、そのまま、部屋を出た。


「あ、おはよう」

「姉ちゃん、早いね」

「そりゃそうでしょ。今日から新しい学校になるんだから。でも、今まで共学だったけど、これからは、女子高に行く事になるからね」

「そりゃ、こっちも同じだよ。こっちはこっちで男子校に行くんだから」

双子である井野嶽幌と桜は、両親が海外赴任なので、この家には二人しかいなかった。さらに、二人が行く高校は、それぞれが隣接したところにあり、家も目の前にあった。

「さて、今日の朝ご飯は、桜特製の卵焼きだぞ」

幌は、いやな顔をした。

「なんで、姉ちゃんの真っ黒焦げの卵焼きを食べないといけないんだ?」

卵焼きがフライパンの中でくすぶっていた。

「もはやこれは、人が食べるものじゃないよ。こんな真っ黒こげ」

「幌が作るのは、フランス料理のプロでも真っ青になるようなものだよ。そんなものと、私を比べないで欲しいな」

「でも、これはひどいよ」

横に置いてあった箸で、卵焼きと称されるものをつついた途端に、崩れ落ちた。

「…………」

二人は、互いに目を合わせあった。

「さて、とりあえず、パンを食べとこ」

桜は、棚から、パンが入った袋を取り出した。6枚切りの食パンだった。二人は、それを2枚ずつ食べた。部屋にかかっている時計が、ちょうど8時であることを示していた。


第2章 始めて行く高校


8時15分、二人は、同時に家を出た。

「じゃあ、また」

幌は、家を出て右手にある手野町市立男子高等学校に、桜は、家を出て左手にある手野町市立女子高等学校に、それぞれ向かって行った。


幌は、坂を下りながら、胸が飛び上がるような衝動を抑えていた。初めての所に行くわけではない。だが、入試の時に行ったっきりだったので、緊張をしているのだった。幌は、校門まで来て、上にそびえ立つ、校舎を見ていた。そして、最初の一歩を踏み出した。


桜は、坂を上がりながら、ちょっと、ぼんやりしながら歩いていた。頭の中は、幌のことを考えていた。すると、校門の前で止まらずに、ちょっと行きすぎた。少し恥ずかしがりながら、校門の中へ歩いて行った。


手野町市立男子高等学校と女子高等学校は、市が出来る以前の手野町時代に建造されたもので、50年ぐらいの歴史があった。しかし、ここ最近の少子化により、来年、統合される事が決まっていた。彼らは、手野町市立高等学校の1期生になるのだった。


幌は、入学式を経て、教室に入っていた。担任の紹介をしていたが、まったくそのような事は聞いていなかった。1クラス、30人おり、それが3クラスあった。ちょうど、視線の先には、横の校舎である、女子高の校舎があった。空は、青々と澄み切っており、どこまでも、飛んでいく事が出来そうだった。


入学式が終わると、桜はすぐに教室へと上がらされた。2クラスしかない1年生は、横にある、男子高を見下ろす形に校舎があったので、窓際の所の席になると、男子高の全景が見渡せれた。1クラスにつき、25人しかいないこの学校では、容易に名前を憶える事が出来た。


先に、家に帰れるのは、桜だった。今、たった一人で家にいる事が、とても不自然な感じがしていた。仕方ないので、学校でもらった学校の説明を読んでいた。そこには、寮の話や、これまでの事、それに、大学進学先とこれまでの実績が書かれていた。寮は、女子高単独で、1つあり、男子高と統合された後でも、男女別々の寮として存続する事になっていた。

「ただいま〜」

幌の声が玄関でした。

「おかえり」

桜は、説明書を机の上に開きっぱなしで置き、玄関へと走って行った。


その夜、二人で食卓を囲んでいると、誰かが、家の中に入ってきた。

「久しぶりだな」

「お父さん、お母さん!」

幌が、その声を聞いて、走ってゆく。

「元気にしていたようだな」

「どうだった?」

「ああ、今回も、ばっちりだ。大丈夫、幌が心配するような事はないさ。今回も、定期的な帰宅だから、ちゃんと、勉強に励むんだぞ」

お父さんは、しがみついてくる幌の頭をなでながら言った。

「高校は、どんな感じなんだ?」

「心配するような事はないよ」

桜が言う。幌の2歩ほど後ろで腕組みしながら壁にもたれている桜は、お父さんのすぐ後ろにたっているお母さんを見ていた。

「おかえり」

「ああ、やっと言ってくれたか。ただいま、桜、幌」


この夜、家族は久し振りに全員揃って晩御飯を食べた。お父さんとお母さんは再び翌日には旅立っていった。

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