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カレンツ・ナクターの事情  作者: 籐仙日々人
15/18

見えるもの、見ていないもの

書きました、全く校正が巧く出来ません。広い心にて御容赦下され。

ブックマークにポイントありがとうございます。

 15.見えるもの、見ていないもの


 世界には『様々』なものがある。

 かつて、箱庭に世界を閉じ込めようとした『魔法使い』がいた。

 人の世は膿み、世界は絶望をして仕組まれていると、心を病んでいた。

 彼は、逃げだそうとした。

 しかし、死ぬ勇気はない。

 死は救いでは無かったからだ。

 だから、彼は創ろうとしたのだ。

『命』と『精』の楽園を。


 これは、お伽噺。

 子供に聴かせる寝物語り。


 その原型は、最早あやふやで、何が正しいものなのかは、確かなモノは何も残っていない。


 今、アーロネスの問診は、催眠状態に近かった。

 だから夢を見ているのかも知れなかった。

 取り留めも無く過去の記憶が浮かんでは表れ、沈んでは形と成り、結んでは解け、を繰り返していた。

 これは、魔法なのか?

 それとも、混濁した意識の編む魔術?

 魔法は、識ることから始まる。

 世界に理を覚え、世界に法を覚えて、使いこなすモノだ。その筈だ。

「アーロネス、質問を続けます」

「構わない」

「赤とは何色ですか?」

 水晶らしき直方体が朱く染まる。

「判りました。それが、貴方の赤なのですね」

「そうだ」

「次は、剣を」

 水晶体から幻影の剣が浮かび、斬り結ぶかのように動いている。

 これは、珍しい現象だ。

 直刀、両刃、両手持ち、刃は厚く、鍔は太く大きい。

 そのときのソファーのアーロネスの身体は、穏やかに揺らがずのまま。代わりに水晶体の光点が人型を示し、光は線になり、眩いばかりに全身を光が流れる。

 水晶体の光線の瞬きは、動きを表しているのか?

 剣というモノは、非常に重たい。

 特に、アーロネスが思い浮かべた剣など、儀式用のそれらしきモノは、あくまで想像でしか振るうコトが出来ないモノだ。

 もちろん、魔法剣など例外はあるが、重さを制御下に置いた剣など、帝国内に一つあるかどうか。

 まるで、視てきたかのように、幻のそれはある。

 シアーナ部長は溜息を吐いた。

 “たぶん、極秘事項だわ”

 この問診は、無意識体に掛けるもなので、原理的に嘘は吐けない。

 “この仕事に就いてから、無用な秘密ばかり識るし”

 剣の質問は、深層心理表現にて端的な質問で、その人の外交的反応を表しやすい。

 そのあとも、幾つかの際どい質問を重ね、肝心となる質問に移行する。

「では、貴方の視ている視覚を表現して下さい。遣り方は解りますか?」

「ああ、」

 直方体の頭部の光の線が、繊細に、複雑になった。頭蓋骨らしきシルエットの中、神経網のようなパターンを繰り返している。

 この装置についての説明を受けていないアーロネスに解る筈ないのだが、装置に掛かると被験者は一定時間にて理解をすると云う。だから、起動催眠の後は習熟の助けをし、予後観察するだけで良い。

 部長は、それが神経のものと魔経のものとが絡み合って、何か違うものを構成していると読み取った。

 “これは、機関長の判断が必要かも”

『魔』の経絡の表示だけでも、過去に二件に過ぎない。

 彼女は、アーロネスの催眠を少し深くして、隣室の機関長オゥタレストを呼びに部屋を出た。


 アーロネスは、微睡みとも、夢とも、幻想ともつかない、どこかにいた。

 微睡みはディュオーネス妖精郷に居ることだとされているし、夢はサティウス神儀冠の管轄で、幻想はガガルツ神書冠の記すが処と云われている。

 神は居る。

 が、どこにでも居るわけでもない。

 神は人に降臨するものであり、万人の為に顕現したりするわけではないからだ。

 人は神を観る。

 観ることの“出来る”が、人としての精一杯。

 いま、アーロネス・ツイス・ワウターは“神”と対面していた。

 それは“観る”より近い。

 否応なく“神”だと識った。

 世界には、人が識りうる全てより、更に世界はある。

 “ここ”もそうなのか?

 だから、神が居るのか?

 “それ”は人が識りうる外から来たと、彼には解った。理屈ではない。人という意思ある生命体に備わっている、本能のような直感のような名状しがたい何かが、“それ”を神だと識らせてきた。

 なにより、神と人では違いすぎる。

 あらゆる感覚のスケールが違う。

 此の世ならざる場所にて、彼は感動の渦の真ん中で冷静に佇んでいた。

 それが、正確な表現であるかは判らない。

 感情を複層階に分けているのだ。

 その神は、言葉を発した。

 或いは、類似する何かの表現なのかもしれない。

 アーロネスは理解した。

 本能的に『納得』したのかもしれない。


 瞬く間であった。

 神の降臨すら、もはや、あやふやと混沌に沈んでいく。

 アーロネス・ツイス・ワウターの存在に、何らかの啓示をしたはず。なのに記憶が(こぼ)れていく。人が記憶出来る事など限られている。まして、確かな何かを見たわけではない。

 それが、人に許された限界。

 いや、限界と言うべきではないかもしれない。そう在るべきなのだ。

 人は、神ではない。

 神は、人たり得ない。

 何かを齊すは、齊されるに等しい。


 シアーナ部長は、機関長を伴って戻ってきた。

 時間は、三分にも満たない。

 そして、部屋の暗さに驚く。

 あれほど、光輝いていた水晶体は、暗く沈黙し、石の様になっていた。

「どういうこと、」

 激しく詰問の声を上げる。

 オゥタレストだ。

 今までに無い光線が表れ、滅多に示されない神経と魔経と思しき描き分けがあったと聞いて来た。

 伯母としての顔というか、姉らしくというべきか、その血相が明らかに悪いのはツイス・ワウターの家は血族意識が深いせいかも知れない。

 彼女にしても、普通の結果を見るとは考えては居なかった。

『ここ』はそういう場所なのだ。

 特殊な事態を想定している。

 それでも、想定外の殊は起こる。

『魔術環処』即ちレセーテ機関は『魔術』の医療展開を『理』にて観察する使命を担っている。帝都にある秘密機関は七星候管轄である。

 つまり、いくら古い家系の華薫貴族といえど、事態によっては『家』など、どうとでも出来る。

 貴族の者にして愛情深い事は、弱点にもなり易い。

 今回の事態は『特殊魔術遺産』を使用しての事態。

 思ったより拙い事態に、伯母オゥタレストとして震える。

 だが、その淘汰される素質で、血族が500年の貴族時間を越えてきたのは、伊達や酔狂ではない。傑出した魔法的素養による特質体だからだ。

 とはいえ、この血脈にして初めての事態ではあった。

 何しろ


 神を降ろしたのだ。


 其れは、明らかに普通では無い。

 帝国の知る限り、30件前後しか認識出来ていない。確認となると、更に少ない。

 千年の記憶にして、僅か、この数。

 其れが神降ろし。

 ただ、彼女たちには判らない。その場面に立ち会ってないからだ。会ったとしても、それを“そう”だとは認識が出来るかは、解らない。

 今の、彼は一見して“死”が迫っていた。

 死は、幾つかの状態で訪れる。

 構成する人の意識“人意”(じんい)の喪失。

 構成する人の肉躰“人躰”(じんたい)の損失。

 そして、構成する人の魔羅考(マラナス)“人羅”(じんら)の減失。

カレンツ嬢、現代っ子らしくタイプも打ちますが、万年筆での書き文字も大好きです。

が、残念ながら巧さはそこそこ。

筆圧が高いのです。

そして、肩凝り。

お付きのメイドになマッサージ技術必須。

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