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中々、アクセス数が伸びませんなぁ。タイトルとかがダメなんでしょうね。
男について行くと、そこには大きくて立派な建物が建っていた。それもそのはずで、その建物とはこの街を治めている貴族が住んでいる館だからだ。
「少し待っててくれ。話を通してくる」
男はそういうと俺たちを外に待機させたまま中に入って行く。暫く待っていれば、再び男がやって来て言う。
「許可が下りた。入ってくれ、夕飯はまだだろ? 用意も頼んでおいた」
ちょっと俺らのことを信頼し過ぎではないか? と思ったりもするが信頼されないっていうのも悲しい話なんで別に問題はない。
中は外見通り、立派だった。門を開ければ大広間へ出て、メイドが勢ぞろいでお出迎えをする。もっとも俺らは主人でも何でもないのでお出迎えを何もないが、そういうイメージとでも言えば、少しは想像できるだろうか?
男は歩き続ける。俺らもついて行く。大広間を真っ直ぐ進み、右へと曲がり二つ目の部屋に入る。慌ただしく食事の準備に追われるメイドが数名いて、ど真ん中には長いテーブルがあり、どんどん食事が並べられて行く。
「こっちだ。こっち」
少しの間、そんな光景に目を奪われていれば、男から声がかかる。既にコウはテーブルへとついており、少し恥ずかしい気分になるが顔には出さないように努める。
テーブルに着いて辺りを見回せば、男も席に着くところで、他にも六人座っているのが分かった。森での男(逃げた癖にな)と少女。それに見たことのない夫婦らしい男女に若い男女。こっちは兄妹だろうか。恐らくは貴族なのだろうとあたりをつける。
テーブルには俺たちを合わせた計九人が座っているがまだまだ空席も多く、一体何人座れるのだろうかと数えるか迷っているところで、この家の主人らしき人物が話し始める。
「そろそろ食事の準備も出来たようだし、頂くとしようか」
この世界には食事をする前に何かをすることはあまりない。乾杯などの掛け声は存在するが一般的な食事の時はこのように主人が適当な一声かけて食べるのが普通だ。もちろん神に祈ったりしてから食べる国もあることにはある。
食事はコース料理ではなかったので、自分でとって食べることになるので近くにあったものから皿にとって食べていく。
「それで? その二人が護衛に付くって話だったが名を聞いていなかったね。私はこの家の主でこの街の長をやっている、アレクシス・レインという。こっちは妻のヘレナに娘のルナ、息子のグレンだ」
知らない話で外堀から埋められた気がするが、順々に名前を紹介されたのでこちらも返すことにする。
「ヘパイストスにコウね。宜しく頼むよ。事情は聞いてるか分からないが、それなりに重大な仕事だ。無論、今まで通りカールとルークはついていってもらうから変に気負うことはない」
何の説明も無しに外堀だけ埋められたことに対し、コウは意外とご立腹らしい。ここまでつれて来た男、カールを睨みつけている。
だが、カールはその視線に気づいていながらもどうにか流している。結構な殺気も乗せられているみたいだが、スルーできるところを見るとそれなりに出来ることはわかる。
その後は、世間話や身の上話をすることにはなったが、大したことは知らないので、どちらかと言うと聞き手に徹していたところがある。
しかし、何か話題も求められたので何個か他の神の世界の話などを脚色し、冒険譚のように聞かせたが意外と評価は良かった。コウの方は若干空気になり気味と言うか、機嫌が悪いのを悟られているのかあまり話すことがなかった。
その後、客間に通され、事情の説明はされた。
「…すまない。最初に説明するつもりだったんだが、切り出すタイミングも話す時間もなかったんでな」
悪いと思っていない顔でそんな台詞を平然といってのけ、油断は出来ない相手だと認識を改める。
部屋にはカールとルーク、俺たち二人に例の少女の五人がいる。顔を見回し、一息ついたところでカールは切り出す。
「さて、さっきの話だがこの少女を王都まで護衛すると言う話。馬車二台、先頭馬車に俺たちが乗る。後ろに頼む。王都までは二日で着く予定だ。明日朝早くに出て、一日野外で野宿し、二日目の夕方には着きたい。ここまでで何か質問あるか?」
「名は名乗れないんだろうが、名前がないのは困る。そいつはなんて呼べばいい?」
コウが質問し、カールも答える。
「そうだな…。カティとでも呼ぶようにしてくれ。他には? 続けるぞ。不測の事態はあるだろうが第一目標はカティ様を王都に届けること。いざとなったら…」
切り捨ててでも、任務を遂行しろと言う話のようだが、随分と勝手な話だ。とはいっても、異変が起きるまであと二日はある。それにどっちにしても王都には用があるんで、問題があるわけでもない。むしろ、早くつけるなら好都合でもある。
「カール、一つ頼めるか?」
コウがカールに対しお願いする。
「分かった。なんとかしよう」
その日はそこで解散し、明日に備えて寝ることになったが、コウは何やら難しい顔をしていて、俺はついつい考えてはいけないと思いながらも不安な気持ちになるのだった。
朝早くとはいっても、そこまで早くはない。
大体、他の人が起きる時間帯だ。最もその時間に出発なので早く起きないといけないということに変わりはないのだが。
「昨日、頼まれたものだ」
馬車にカティが乗り込んでいる時、カールが来てコウに手渡す。それは黒いコートに黒いブーツだった。それと普通の剣を一振り。そういえば、装備を揃えないといけないとは思っていたが、すっかり忘れていた。
「本当に良かったのか。胸当てなどの装備は?」
「いらん、重くて邪魔になるだけだ」
話しながらもコートとブーツを身に付けていくが元々着ていた服が暗めの服だったので全身が暗い服装になってしまっている。
馬車に全員が乗り込み、次の瞬間にでも出発するところで地面が揺れる。揺れ自体は小さいがこの世界で地震というのは殆どないので、あちらこちらで大騒ぎになっている。やや長い揺れではあった建物なんか被害はほとんどない微弱な揺れが収まるとカールは
「急ごう。大騒ぎになって道を塞がれても困る」
それでも進み始める馬車の中、俺が考えていたのは、予定よりも早い世界の終わりの兆候。
「おい、ヘパイストス? まさか今のが兆候とかいうつもりじゃあないだろうな?」
「分からない。ただ、この世界で地震なんて滅多におこらない」
「んで、いいのか? 呑気に護衛なんかやっていて?」
「あ、あぁ、そういや、話していなかったな。どちらにしても王都にはいくつもりだったんだ。歩きで行くつもりだったから、馬車で行けるのは好都合だからそれは問題ない」
「そうか…。んじゃ早速だが、武器を作ってくれ」
結構、俺には衝撃的だった出来事だが、コウにはそこまででもなかったらしい。むしろ、武器の調達の方が最初だ。と言われた気分でコウの要望通りの武器を生み出していく。
あとは、他愛のない会話したあと、俺は朝が多少早かったこともあって寝てしまった。
「おい、起きろ。ヘパイストス」
起こされたのは、日が沈みそうな夕方だった。寝てしまったのは、大体昼前だったので相当寝ていたことになる。内心、頭を抱えたくなる。
「随分と呑気なもんだったがまぁいい」
少しではあるが顔に疲労の色が見えてなくもない。いや、よく分からない。こいつはそういうのを隠すのも結構得意だったりするからな。
しかし、聞けば魔物が襲ってきたらしい。規模としてはそこまででもないが上位種がちょこちょこいたらしい。
「…悪かった。全く気づかんかった」
素直に謝るが、コウは特に気にしてはいないらしい。懐が広いのか、興味がないのか。
それはそれとして、武器の補充は要求され、次々と用意するが、その間にコウは夜営の準備を始めていた。馬車がいつの間に止まっていたことにもビックリしたが、コウの行動の早さにも驚かされる。
夜営はテントを四つ立てる。御者も含めたら、俺らのパーティは七人だからな。夕飯は悲しいことに肉の燻製とスープという好んで食べたいものでもないが、コウは嫌な顔を一つせず食べている。
「まぁ、慣れてるからな」
だそうだ。お前、何者だよ。と聞きたいところではあるが聞きたくないとも思う。